ページの先頭です

社会動向レポート

MaaS推進において求められる自治体の関与(1/3)

デジタルコンサルティング部 主任コンサルタント 山口 陽平


MaaSには、観光客の回遊性向上や高齢者の外出促進等の地域課題の解消につながるのではないかという期待があり、自治体からの関心が高まっている。本論では、MaaSの推進に向けた自治体による関与のスキームや、民間企業との取り組み方を紹介する。

1.はじめに

Suicaに代表されるIC乗車券とスマートフォンの経路検索アプリの登場により、鉄道・バス等の公共交通は非常に便利な移動手段となっている。交通事業者やプラットフォーマーらはその現状にとどまらず様々なサービス改善に取り組んでおり、クレジットカードを改札機に直接タッチする方式や顔認証ゲート等の改札が登場している他、経路検索アプリにおいても事故等によるダイヤの乱れや不通区間を踏まえてリアルタイムに最適な経路を提案する等の技術が導入されている。

こうした動きは総じて「MaaS(マース:Mobility as a Service)」と呼ばれる取り組みの一部である。国土交通省のWebサイト「日本版MaaSの推進」ではMaaSを「地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。」と定義*1している(図表1)。

普段の交通事業者の働きぶりを見れば、新たに「as a Service」を付け足さなくても十分に良い移動サービスが提供されているではないかと感じる方も多いだろう。しかしながら経路検索アプリの一部では移動の早さや安さだけでなく快適さに注目した経路情報を提供しており、できるだけ地下を通り雨や直射日光を避けて目的に近づけるルート、混雑区間を回避できるルート、直結ではないが少々歩けば乗換ができる駅とバス停を繋ぐルートなどを案内する例がある。それ以外にもオンデマンドバス、シェアサイクルや電動キックボードなどの新しいモビリティの登場といった動きもあり、こうした要素を人間の頭の中で組み合わせて最適な移動手段を導き出すのは難しくなってきている。

その点においてMaaSは、デジタルテクノロジーを活用し様々なモビリティとその乗換方法を最適に組み合わせ、ひとつのサービス(as aService)として便利に利用できるようにする手段として注目されている。日本には既に数多くの交通手段が整備されていることもあり、MaaSが目指す検索・予約・決済の統合を一足飛びに実現することは難しいが、IC乗車券1枚で様々な交通手段を利用できることや、乗換案内アプリからシェアサイクル等が予約できるようになってきており、MaaSの実現が徐々に進んでいると言える。

上で述べたような細かなルート案内や新たなモビリティへの対応はどちらかと言えば都市部をイメージしたものであるが、MaaSは地方部においても有力な課題解決策の一つとして注目されている。国土交通省の検討会*2においてJR各社がローカル路線の赤字の実情を公表したが、そうした少子高齢化等による鉄道・路線バスの収益悪化傾向がある他、環境保全の観点から自家用車による日常移動を公共交通に転換させるモーダルシフトも課題である。MaaSはそれらの点においても公共交通の需要喚起や、輸送効率向上の糸口となると期待されている。本論では自治体がどのようにMaaSに関与すべきかについて述べたい。


図表1 「自然資本」「生態系サービス」「生物多様性」の関係性
図表1

  1. (資料)国土交通省のWebサイト「日本版MaaSの推進」を元に再構成*3

2.MaaSの地域別モデル

MaaSと自治体の関係を考えるうえでは、地域性が1つのポイントとなる。国土交通省が公表している資料では、MaaSの地域別モデルとして、大都市型、大都市近郊型、観光地型、地方都市型及び、地方郊外・過疎地型の5つに分類され、それぞれに対する地域課題が定義されている(図表2)。都市圏では、移動ニーズの多様化やラストワンマイル交通手段の不足、突発的な混雑等が課題として顕在化しているのに対し、地方圏では、交通空白地域の拡大や高齢者の移動手段の不足等が課題となっている等、地域によって直面する課題は異なるため、自治体は自身の地域に適するMaaSを考えていく必要がある。


図表2 企業と自然の相互関係
図表2

  1. (資料)国土交通省 第6回都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会資料「地域別モデルの検討について」(PDF/364KB)
  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
ページの先頭へ