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社会動向レポート

資産所得倍増プランを踏まえた退職給付制度設計のポイント(1/3)

年金コンサルティング部 主任コンサルタント 下野 啓太


資産所得倍増プランにおけるNISA、iDeCoの法改正の動向を踏まえ、企業年金制度も含めた法改正の経緯や各団体からの要望事項について整理し、企業が自社の退職給付制度を設計する際に押さえておくべきポイントを解説する。

1.はじめに

政府は2022年6月7日、経済財政運営と改革の基本方針2022(以下、「骨太方針2022」)と、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ(以下、「全体構想」)を閣議決定した。骨太方針2022では、「貯蓄から投資」への「資産所得倍増プラン」の策定が盛り込まれ、全体構想においては内容について次のとおり記載された。「家計が豊かになるために家計の預金が投資にも向かい、持続的な企業価値向上の恩恵が家計に及ぶ好循環を作る必要がある。このため、個人金融資産を全世代的に貯蓄から投資にシフトさせるべく、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的な拡充を図る。また、現預金の過半を保有している高齢者に向けて、就業機会確保の努力義務が70歳まで伸びていることに留意し、iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革や(中略)資産形成を行いやすい環境整備等を図る。これらも含めて、新しい資本主義実現会議に検討の場を設け、本年末に総合的な『資産所得倍増プラン』を策定する」*1

資産所得倍増プランは「新しい資本主義実現会議」を通じて検討され、2022年11月28日の第13回会議をもって決定された。第13回会議の締めくくりとして岸田首相は「新しい資本主義が目指す分厚い中間層を形成する上で、家計の賃金所得に加え、金融資産所得を拡大することは大切である。NISAの拡充・恒久化、iDeCo制度の改革、そして、消費者が信頼できるアドバイスの提供の仕組みの創設を中心に取組を推進する」*2と発言しており、プランの「第一の柱」として「家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化」が、「第二の柱」として「加入可能年齢の引上げなどiDeCo制度の改革」が位置付けられていることから、全体構想に記載されたとおり、NISA、iDeCo活用のための環境整備がより一層進められていく流れのようである。

本稿では、現時点で判明しているNISA、iDeCoの法改正の内容のみならず、企業年金制度も含めた法改正の経緯や各団体から政府への要求事項についても紹介し、企業が自社の退職給付制度を設計する際に押さえておくべきポイントを整理する。

2.NISAの法改正

2022年12月16日に与党により取りまとめられた令和5年度税制改正大綱において、NISA改正の具体的内容が記載された。

NISAについては、「貯蓄から投資へ」の流れを加速し、中間層を中心に幅広い資本市場への参加を促し成長を実現する観点から、抜本的拡充・恒久化を行う方針である。

まず、若年期から高齢期に至るまで、長期・積立・分散投資による継続的な資産形成を行えるよう、非課税保有期間の無期限化、口座開設可能期間の恒久化が実施される。

次に、個人のライフステージに応じて、資金に余裕があるときに短期間で集中的な投資を行うニーズにも対応できるよう、年間投資上限額が拡充される。現行つみたてNISAが40万円、現行一般NISAが120万円のところ、現行つみたてNISAの役割を引き継ぐ「つみたて投資枠」は年間120万円(現行つみたてNISAの3倍)、現行一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」は年間240万円(現行一般NISAの2倍)に拡充される。現行では、つみたてNISAと一般NISAの併用はできないが、新制度では、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能となり、年間投資上限額は合計で360万円となる。

非課税保有限度額については、現行つみたてNISAが800万円(40万円×20年間)、現行一般NISAが600万円(120万円×5年間)のところ、新制度ではつみたて投資枠と成長投資枠を合わせて1,800万円、成長投資枠の限度額は1,800万円の内数として1,200万円(現行一般NISAの2倍)となり、総額で見ると倍以上となる。


図表1 NISA の現行制度と新制度の比較
図表1

  1. (資料)金融庁ホームページより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成
  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
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