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シリコン酸化膜表面とアミノ酸との相互作用解析

背景及び目的

医療目的で用いられるインプラント(人工の歯や関節など)は生体内に埋め込んだ際にそのシリコン酸化膜表面が生体(タンパク質など)と良くなじむ必要があります。より生体親和性の高い表面を持つインプラントを設計するため、シリコン酸化膜表面とペプチドとの相互作用の理論的な理解が必要とされています。そこで、本解析ではシリコン酸化膜表面のモデルを複数作成し、複数のアミノ酸をドッキングさせ、これらの間の相互作用を結合エネルギーや電荷移動の観点から解析しました。

解析事例

シリコン酸化膜表面は水中にあるとし、シリコン原子はOHやOH-などで終端された表面モデルを作成しました。この表面近くにアミノ酸の一種のアルギニン分子を配置し、古典力場法(MM法)に基づく分子構造計算プログラムを用いて分子が表面に吸着(ドッキング)した構造を計算しました。続いて、量子力学の密度汎関数理論(DFT)に基づく電子状態計算プログラムを用いて、さらに高精度に分子が表面に吸着した構造を計算しました。そして、その構造での電子的な結合エネルギーと電荷移動量を評価しました。その結果、シリコン酸化膜表面の負の電荷が分布する酸素原子にアミノ酸の正の電荷が分布する領域が強く結合する結果が得られました。


図:アミノ酸の一種のアルギニン分子の正電荷が分布する水素原子の箇所が酸化シリコン表面の負電荷が分布する酸素原子の箇所に水素結合で吸着する様子。

成果及び展望

シリコン酸化膜表面とペプチドとの相互作用に関する本解析の技術ならびに知見は以下のような研究開発へ応用が期待できます。

  • シリコン酸化膜表面のタンパク質認識能力を応用した自己組織化による新しいナノ構造の形成
  • シリコン酸化膜表面とタンパク質の相互作用によるタンパク質の変性やの制御
  • 人工ナノ粒子とタンパク質の相互作用による毒性の発現の解明

共同研究

本解析事例は、立教SFRプロジェクト「複雑系の反応・物性の化学」の研究の一環として行った立教大学理学部 望月教授との共同研究による成果です。

成果発表

本解析を発展させた成果を以下の論文で発表しています。

  1. “Modeling of peptide-silica interaction based on four-body corrected fragment molecular orbital (FMO4) calculations”, Y. Okiyama, T. Tsukamoto, C. Watanabe, K. Fukuzawa, S. Tanaka, Y. Mochizuki, Chem. Phys. Lett. 566 (2013) 25-31

お問い合わせ

担当:サイエンスソリューション部
電話:03-5281-5311

サイエンスソリューション部03-5281-5311

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