空気弁モデルを考慮した解析例
図1に解析モデルを示します。
図1 空気弁空気体積
管路途中にワンウェイサージタンクを有する送水管路において、ポンプ下流に空気弁を設置しています。空気弁設置高さは、吐出槽水位よりも低い位置にあります。この管路でポンプトリップが生じた場合の解析を行いました。図2に空気弁の空気体積の時間変化を、図3にワンウェイサージタンク取り付け位置上流側の水頭と流量の時間変化を示します。ポンプトリップ後、空気弁は吸気し水頭は一定付近に保たれています。しかし吐出槽からの逆流により、排気終了時に水柱衝突があり大きな圧力上昇が発生しています。
図2 空気弁空気体積
図3 サージタンク取り付け位置上流側の流量と水頭
ポンプトリップによる水撃解析
管路上流側にあるポンプがトリップした場合に生じる水撃(ウォーターハンマー)の解析である。水撃により配管に負圧が生じる場合があるが、負圧が-10m以下になる(圧力が水蒸気以下になるのと同等)と水柱分離が生じる。そのためポンプにフライホィールをつけるなどして負圧の発生を抑える必要がある。本解析は、ポンプにフライホィールをつけることにより、ポンプトリップ時に配管の負圧がどのように変化するかを確認したものである。
解析モデル
全長900mの送水管の上流側にポンプが設置されている。ポンプはu-FLOW/WHのポンプモデルで模擬し、瞬時停止し慣性により回転数を下げた。吸い込み側水槽と吐き出し側水槽の高低差は15mである。
ポンプトリップによる水撃解析
解析結果
揚水発電所の水路系過渡応答解析
みずほリサーチ&テクノロジーズの水撃解析プログラムu-FLOW/WHの応用例として、揚水発電所の水路系の過渡解析を目的とした改良例を紹介します。 (本システムは、東京電力株式会社および東電設計株式会社の共同により、みずほリサーチ&テクノロジーズが開発したものです。)
概要
揚水発電所の概要(模式図)を図4に示します。今回対象としたのは、この図の上部調整池と下部調整池の間の数キロにおよぶ水路です。u-FLOW/WHにはポンプモデルが組み込まれていますが、水力発電所のポンプ水車は特殊な特性をもっているため、ポンプ水車の回転数・流量・ヘッド・トルクの特性カーブを反映した計算モデルを組み込みました。なお、サージタンクや水路の分岐・合流に関しては、従来のu-FLOW/WHでモデル化が可能です。
図4:揚水発電所の摸式図
ポンプ水車モデル
u-FLOW/WHは解法として特性曲線法を採用しており、流体機器は水路系モデルの節点に設定されます。 各タイムステップごとに節点において、上流側・下流側の水頭HI、HJと流量Qについて、
HI=C1~B1・Q、 HJ=C2+B2・Q
という方程式が成り立ちます(C1、B1、C2、B2は特性曲線法による係数)。これをポンプ水車の特性カーブと連立させることにより、ポンプ水車の落差ないし揚程と流量およびポンプ水車の回転数が過渡的に求まります。ただし、ポンプ水車の特性カーブは、ガイドベーン開度ごとに、例えば次のような変数系で表されます(n:回転数、D:代表径、M:軸トルク)。
n11=n・D/H 1/2 Q11=Q/(H 1/2 ・D 2 ) M11=M/(H・D 3)
ポンプ水車の回転数nは、軸トルクに応じて過渡的に変化させます。
揚水発電所の水路系過渡応答解析
計算例
全長4kmの仮想的な単一水路について、単純なポンプ水車特性カーブを設定し、発電運転中の負荷遮断時の過渡応答解析を行った結果を図5に示します。発電運転中に時刻0秒で水車の負荷を遮断し、ガイドベーンを0.25秒の遅れをもって10秒で全閉させた結果、水車の上流側の圧力が急激に上昇し、一方で下流側の圧力が急激に下がる様子が模擬されています。
さらに、初期流量の方向を変えることにより、ポンプ水車の入力遮断時の過渡応答解析も行えます。また、ポンプ水車の回転数を固定することにより、定速度運転時の負荷変化の応答解析も行えます。
図5:負荷遮断時の諸量の変化
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