*本稿は、『plaplat®』2025年12月9日(発行:長瀬産業㈱)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。
世界各地で規制が刻々と変化するPFASをめぐり、欧州では2025年8月20日に、2023年に公表されたPFAS制限提案の更新版が公表され *1、注目を集めています。今後、2026年春頃にパブリックコンサルテーションが予定されていることから、本稿ではPFAS制限提案の更新版について整理し、今後のパブリックコンサルテーションに向けて準備すべき事項をまとめます。
PFAS制限提案更新版の概要
欧州におけるPFAS制限提案は、2023年1月に公表後、5,600件が寄せられたパブリックコメントを経て、セクター・トピック別に欧州化学品庁(ECHA)のリスク評価委員会(RAC)および社会経済分析委員会(SEAC)で審議されてきました。2025年9月までに「PFASの有害性」、「消費者向け混合物・化粧品・スキーワックス」、「金属めっき」、「石油・鉱業」、「繊維・室内装飾品・皮革・衣料品・カーペット」、「食品接触材料・包装材」、「建設資材」、「フッ素系ガス用途」、「輸送」、「エネルギー」、「医療用機器」、「潤滑剤」についてRAC、SEACともに暫定結論に達したとしています。
両委員会の会合は四半期ごとに開催されており、今後は、2025年12月以降の会合で、RACが「排出量推定の一般的なアプローチ(廃棄物を含む)」、SEACが「社会経済分析に関する一般的なアプローチ」「電子・半導体」について議論する予定です。
更新版では、当初案に含まれていなかった以下の8セクター(印刷、シーリング、機械、他の医療用途(例:医薬品の即時包装、賦形剤)、軍事用途、爆発物、産業用繊維、より広範な産業用途(例:溶剤、触媒))が検討対象に追加されました。
その結果、6.5年または13.5年の適用除外が提案されていた製品・用途分類の件数は、当初案の29件から更新版では87件へと大幅に拡大しています。(具体的な製品・用途分類は、PFAS制限提案更新版のサマリー資料 *2におけるAnnex 2を参照)
なお、13.5年の適用除外は不確実性が高く、必要に応じて期間を見直すレビュー条項の導入可能性が示唆されています。ただし導入の可否は欧州委員会の所掌であり、現段階での導入は確定していません。
再生プラスチックの除外・条件付きの使用継続
更新版で新たに注目されるのが、中古品・スペアパーツ・再生材(紙・板紙製品、繊維製品、プラスチック)に関する免除規定です。PFASを含有する製品や部材が既に市場に存在し、再利用や再資源化の過程で新たなPFASの製造・使用を伴わない場合、上述の材料に免除規定が適用されます。
中古品や再生材へのPFAS含有が禁止される場合、サーキュラーエコノミーの観点で課題が生じるため、中古品、予備部品、再生材を適用除外に追加した点は画期的です。
また当初案では、PFASの製造・上市・使用(輸入を含む)について、①18か月の移行期間後の完全な禁止(制限オプション1、RO1)、②6.5年または13.5年の適用除外(RO2)、の2択のみが提示されていましたが、更新版では、「ライフサイクル全体にわたる排出を最小化する厳格な条件下での継続使用を認める選択肢」(RO3)も、特定のセクター(PFAS製造、輸送、電子・半導体、エネルギー、シーリング、機械、産業用繊維)において検討されることとなりました。
たとえば、PFAS製造については、管理された条件下でポリマーPFASを生産することを目的とし、平均排出係数(= PFASの年間排出量 / 施設内で製造されたPFASの年間総量)を制限値以内に抑制することを条件としています。
また半導体では、フォトリソグラフィー由来のPFAS含有液状廃棄物の全量回収・適正処理(焼却・SCWO(超臨界水酸化)等)の義務化等を条件として、使用を認めることが検討されており、電池では、EU域内における適正処理やPFAS含有部品の回収、モニタリング、デジタル製品パスポート(DPP)における情報伝達が検討されています。
パブリックコンサルテーションに向けて準備すべき事項
RACとSEACの評価は2026年3月に終了予定であり、その後すぐに、SEACの意見書草案に対するパブリックコンサルテーション(60日間)が実施される予定です。2025年10月30日に開催されたECHAのセミナー資料 *3によれば、SEAC案の特定セクションについては、以下の情報提供が求められます。
- 代替可能性:用途別のPFAS必要性・使用量(ポリマー/非ポリマー/フッ素ガス別)、代替の有無と根拠、開発に要する期間・条件・課題
- 影響評価:禁止時の年間利益減少額、雇用影響、その他の社会的負の影響(安全保障・サプライチェーン・重要サービス継続性への影響等)
- 条件付き継続使用(RO3)に関する情報:一定条件下(期間限定または無期限)の継続使用が許される場合の影響の説明
特にRO3が検討されているセクターのうち、エネルギー、電子・半導体、産業用繊維に関しては、総合的に「妥当とみられる(Likely Proportionate)」との評価に基づき設定される可能性が高い一方、輸送、シーリング、産業機械では「十分に効果的ではない(Not effective enough)」と評価されています。追加的な情報がない場合にはRO3が設定されない可能性もあります。
初回のパブリックコンサルテーションでは、日本から900件以上の意見が寄せられましたが、準備が不十分なまま意見を提出した企業も少なくなかったと推察されます。今後は、条件付き継続使用(RO3)の設定に向け、代替可能性やPFAS禁止時の影響、およびPFASの排出コントロールの妥当性を示す客観的な証拠(工程条件、排出管理、廃棄管理、情報伝達等)を準備しておくことが重要です。
参考文献
-
*1ECHA (2025) Updated PFAS restriction proposal (Draft Background Document)
https://echa.europa.eu/registry-of-restriction-intentions/-/dislist/details/0b0236e18663449b -
*2KEMI (2025) What you need to know about the updated PFAS restriction dossier
https://www.kemi.se/download/18.43415f2e19a0f60356220f8/1761224887540/What
%20you%20need%20to%20know%20about%20the%20updated%20PFAS%20restriction%20dossier-Updated-2025-10-23-2.pdf(PDF/2,011KB) -
*3ECHA (2025) Webinar on SEAC PFAS draft opinion consultation
https://echa.europa.eu/documents/10162/142574544/251030_seac_pfas_draft_
opinion_consultation_webinar_all_slides_en.pdf/86d00d62-9918-a57c-9d3e-98812212a7e9?t=1761720230071(PDF/1,360KB)
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