コロナ禍明けの多様な働き方の実態と展望 自律的なワークスタイルの選択がもたらす効果とは

2023年6月22日

デジタルコンサルティング部

岡松 さやか

2023年5月から新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、3年以上続いたコロナ禍が明けつつある。コロナ禍は、在宅勤務をメインストリームに変える等、日本企業の「働き方」に大きな影響を与えた。コロナ禍が明けつつある今、出社勤務に回帰する企業もある一方、在宅勤務を拡大し居住地のルールを撤廃する企業も出現し、働き方のあり様はさらに多様化している。人的資本の観点からもワークプレイス戦略は経営課題の一つとなっており、出社することへの意味づけやオフィスに必要な広さ、機能に頭を悩ませる企業は多い。

働き方が目まぐるしく変わる中、ワークプレイスの選択はビジネスパーソンにどのような影響を与えているのだろうか。弊社 デジタルコンサルティング部では、株式会社アスマーク*1との共同研究として、全国のビジネスパーソン500名を対象に「ワークプレイスの自律的な選択と効果に関するアンケート調査*2」を実施した。本稿は、2023年3月に実施した調査結果を用いて、ワークプレイス選択がビジネスパーソンにもたらす効果や多様な働き方に関わる課題とこれからを展望する。

出社勤務+αで多様な働き方が浸透

働き方の現状を紐解くため、コロナ禍以前のメインストリームであった「出社勤務(固定席/フリーアドレス)」に焦点を当ててみると、固定席出社勤務のビジネスパーソンの48.9%が固定席での出社勤務のみ、23.9%が固定席出社勤務と在宅勤務を組み合わせている。また、コロナ禍によるテレワークの浸透に伴って増えつつあるフリーアドレス出社勤務*3のビジネスパーソンの結果を見ると、39.9%がフリーアドレス出社勤務のみで、37.2%がフリーアドレスと在宅勤務を組み合わせている。2023年3月現在、「出社勤務」のみのケースも一定数見られるが、出社勤務とその他の働き方を組み合わせた多様な働き方の方がスタンダードになりつつある。

図表1 直近1カ月に実践した働き方の組み合わせ(上位5つ)

図1

(出所)(株)アスマーク、みずほリサーチ&テクノロジーズ「ワークプレイスの自律的な選択と効果に関する最新データ」

  1. *凡例
    固定(固定席の出社勤務):自分の固定席(デスク)での働き方
    フリーアドレス(フリーアドレスの出社勤務):自分の固定席(デスク)を持つ従来のオフィスと異なり、従業員が自由に席を選ぶことができる働き方
    在宅(在宅勤務):オフィスに勤務せず、自宅で勤務する働き方
    サテライト(サテライトオフィスでの勤務):本拠(本社)以外の営業先や自宅近くのオフィスで勤務する働き方
    ワーケーション:Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語で、 テレワーク等を活用し、普段の職場や自宅とは異なる場所で勤務する働き方

ワークプレイス選択にビジネスパーソンの6割が関与

本調査では、出社勤務や在宅勤務の日(時間)、働く場所(座席等)をご自身で選択することを「ワークプレイスの自律的な選択」と定義した。アンケートの結果によると、63.6%が「ワークプレイスの選択に自律的に関与」しており、その内訳をみると、「出社する日程の意向を表明できる」、「在宅勤務をする日程の意向を表明できる」が7~8割を占めた。働き方の多様化に伴い、多くのビジネスパーソンがワークプレイスの自律的な選択に関与していることが分かる。

図表2 ワークプレイス選択への関与の状況

図2

※「ワークプレイスの選択に関与していない」には、固定席出社勤務のみのケース、出社勤務や在宅勤務の日程に当人の意向が反映されないケース等が該当。

(出所)(株)アスマーク、みずほリサーチ&テクノロジーズ「ワークプレイスの自律的な選択と効果に関する最新データ」

ワークプレイス選択に関与する方が、エンゲージメントが高い

多様な働き方を実践することによる効果の結果を見ると、ワークプレイスを自律的に選択する方が各種効果を得やすい傾向が見られた。特に、「自分のペースで仕事を進められる」「生産性・業務効率性が高まる」は、ワークプレイスの選択に関与していない方と比較して、15~20%程度高く効果を実感している結果となった。

図表3 多様な働き方を実践することによる効果(ワークプレイス選択への関与別)

図3 

(出所)(株)アスマーク、みずほリサーチ&テクノロジーズ「ワークプレイスの自律的な選択と効果に関する最新データ」

また、本調査では、「今の仕事に満足している」「今の仕事にやりがいを感じている」「この職場で働き続けたい」「会社に対して愛着がある」等のエンゲージメントに資する9項目の状況を"とてもよく当てはまる"から"まったく当てはまらない"の6段階で聴取した。『あてはまる』の結果に着目すると、全ての項目においてワークプレイス選択に関与している方が上回った。さらに、「会社の方向性を理解し意欲的に仕事に取り組んでいる」「今の仕事に満足している」「今の仕事にやりがいを感じている」「会社が提供しているサービスや製品を自信を持って薦めることができる」は、ワークプレイス選択に関与していない方と比較して、18~20%程度高い結果となった。このように、ワークプレイスの選択がエンゲージメントにも寄与する可能性が伺える。

図表4 エンゲージメントに資する項目の状況

図4

(出所)(株)アスマーク、みずほリサーチ&テクノロジーズ「ワークプレイスの自律的な選択と効果に関する最新データ」

デジタル技術を活用した多様な働き方の整備が必要

最後に、多様な働き方を実践する上での課題と今後の展望について触れたい。

調査結果によると、多様な働き方を実践する上での課題として、「コミュニケーションの頻度が低下する」、「オンとオフの切り替えが難しい」、「コミュニケーションの質が低下する」という回答の割合が高く、ビジネスパーソンがコミュニケーション面で課題を抱えている現状が浮かび上がった。この課題は、コミュニケーションの質や量を担保するようなデジタル技術の活用により解消できる可能性があるものの、調査結果を見ると、社内のコミュニケーション活性化を目的とした社内SNS、サンクスカード*4や在宅やフリーアドレスを活用するための在席状況確認ツールの導入割合は低い現状が明らかになった。こうしたデジタル技術の活用を積極的に促進し、コミュニケーションの課題を解消することが、多様な働き方の実践を後押しすることになる。多様な働き方を整備し、ビジネスパーソンのワークプレイス選択への関与が高め、エンゲージメントの向上に繋げていくことが必要だ。

  1. *1
  2. *2
    株式会社アスマーク「ワークプレイスの自律的な選択と効果に関する最新データ」
    調査結果の詳細は株式会社アスマークのウェブページに掲載の下記の調査をご参照されたい。
    https://humap.asmarq.co.jp/whitepaper/workplace_mizuho/?utm_source=mizuhoreserch&utm_medium=partner&utm_campaign=wp_2306
  3. *3
    自分の固定席(デスク)を持つ従来のオフィスと異なり、従業員が自由に席を選ぶことができる働き方
  4. *4
    社内で感謝の気持ちを伝えるためのオンラインのサンクスカード。社内のコミュニケーション活性化を図る目的で導入するケースが多い。

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