日本の未来を教育から変える。ステークホルダーとともに挑む、教育DXの推進【後編】

2024年10月29日

伊澤 俊

高橋 幸大

栗山 緋都美

近藤 拓弥

前編はこちら

組織横断で教育DXを推進するみずほリサーチ&テクノロジーズ。前編に続き、後編では教育領域において発揮する当社ならではの価値と取り組み事例について、デジタルコンサルティング部の伊澤 俊、栗山 緋都美、高橋 幸大、社会政策コンサルティング部の近藤 拓弥に聞きました。4人が語る、教育DXへの想いとは。

部門ごとのケーパビリティを活かして連携。多様な知見とパッションで教育DXを推進

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官公庁や民間向けのデジタル技術に関する調査・研究の一環として、教育DXの取り組みを主導するデジタルコンサルティング部。伊澤と栗山は、同部のケーパビリティについてこう述べます。

伊澤:デジタルコンサルティング部の強みは、まず金融に限らず、多様な分野のDXに精通したコンサルタントが在籍している点です。教育分野についても高い専門性を発揮してDXを推進し、データ・エビデンス利活用の実績を着実に積み上げています。

さらに、ここにいるメンバーも含め、教育に対する強いパッションを持っていることもケーパビリティの1つです。DXに関する高度な専門性と当事者意識を持った熱意あるメンバーが集まり、当社ならではの支援体制が構築されています。

栗山:官公庁の案件に数多く携わる中で蓄積されたノウハウも、私たちならではの強みだと言えます。文部科学省だけでなく、他の省庁のプロジェクトについても経験が豊富なコンサルタントが多く、官公庁案件の対応力が培われていると思います。

伊澤、栗山と同じくデジタルコンサルティング部に所属する入社4年目の高橋。教員免許を持ち、昨年から教育DXに関するコンサルティングを担当しています。

高橋:私が当社を選んだのは、特定の専門分野も持ちながら、事業範囲が幅広いことに魅力を感じたからです。教育は領域がたいへん広いため、デジタルコンサルティング部をはじめ、民間や官公庁に幅広いコネクションを持つ当社なら、さまざまな課題の解決に貢献できると考えました。

現在は入社当初から希望していた教育DXに携わる中で、対応領域の広さをあらためて実感しています。

一方、社会政策コンサルティング部に所属する近藤。データの利活用に関する豊富な知見が、同部のケーパビリティだと話します。

近藤:医療・介護を含むヘルスケア分野におけるデータの収集や利活用ならびに政策動向の知見を有していること、部内でビッグデータの集計・分析を実施してきた経験があることが当部の強みです。

また、ヘルスケア分野は、エビデンスにもとづいて、治療・ケアの費用対効果をデータで検証し、議論に反映させていくことが社会的に求められるという特徴があり、当部はこういった検証にも携わっています。

これらの知見をデジタルコンサルティング部が有する教育分野の知見と融合し、ともに強いパッションを持って課題に挑む。そうした当社ならではの連携を通じ、教育の効果や質向上の検証など、教育分野に提供できる新たな価値があると信じています。

組織横断で教育DXに挑む中で、近藤は医療ビッグデータの分析経験を通じて得た教訓を活かしていきたいと話します。

近藤:医療・介護分野の場合、NDBや介護DBといったデータベースが構築され、それを活かした分析が行われるという流れとなっています。しかし本来望ましいのは、分析の目的に応じた仕様を設計してから、データを収集するという流れです。

政策的な背景もありその実現は難しい面もありますが、これからDXを推進する教育分野においては医療分野の教訓を活かし、目的に合わせてより効率的なデータ収集・分析ができるように支援していきたいと考えています。

離島での教員研修モデル開発を支援。現場に寄り添う中で、実感したやりがい

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▲デジタルコンサルティング部 コンサルタント 高橋 幸大

教育DXの推進において、成果の1つとして挙げられるのが離島の教員研修モデルの開発を支援したプロジェクトです。高橋はコンサルタントとして参画しました。

高橋:文部科学省の公募事業である「教員研修の高度化に資するモデル開発事業」に採択された東京都利島村教育委員会さまより、業務委託を受けてご支援させていただきました。利島村は人口約300人、児童数約25人の小さな離島です。そうした特有の環境を活かし、「教員が必ず育つ赴任経験」をめざして、教員研修モデルの開発に関する調査研究をご支援するのが私たちのミッションでした。

実施した取り組みは2つあります。まず1つは、実践と研究を相互に反映させる「アクションリサーチ」の方法論を用いた教員研修プログラムの作成・試行です。その成果を他の自治体へ展開するためのフォーマットもあわせて検討しました。

そしてもう1つが、教員の赴任経験における効果の可視化です。その方法論として「教育成果指標リスト」と「教員の資質能力向上に向けた行動チェックリスト」を作成しました。

それら取り組み・事業の成果についてはニュースリリースという形で閲覧可能な情報として公表しています(※)。

高橋は約1年にわたり、現地で教壇に立つ教員と膝を突き合わせながら支援を行いました。

高橋:約10人の教員にご協力いただき、コンサルタント3~4名体制でご支援させていただきました。それぞれリサーチテーマとして設定した課題に取り組んでいただき、定期的にコミュニケーションを取りながら、アクションに対する専門的な見解の提示やリサーチを深めるための検証方法の設計などを行いました。

そうした取り組みを行う中で、高橋が常に意識していたのは、教員の視点に立つことでした。

高橋:教員の皆さまは、忙しい時間を割いてプログラムに協力してくださっています。その貴重な時間を最大限に活かし、どうすればコンサルタントとして真に価値のあるご支援ができるかを自分自身に問い続けていました。

当社ならではの教育DXに関する知見やノウハウを活かし、1つでも多く学びを得られる機会としていただきたい——そうした想いで、教育現場に立つ方々の視点を常に意識し、一人ひとりの想いや悩みと向き合いながら伴走支援させていただきました。

約1年にわたる研修プログラムを通じ、高橋は教員が変わっていく姿に喜びを感じたと話します。

高橋:めざす教員像やありたい姿のイメージがあっても、それをうまく言語化できずに悩んでいる先生方は多くいらっしゃいます。そのため今回の研修では、対話を通じて言葉を引き出し、ワークシートに落とし込んでいただく取り組みを実施しました。

「自分の目標がようやく明確になりました」などのうれしいお声をいただき、コンサルタントとして大きなやりがいを感じました。ご支援を終えた今も、お一人おひとりの顔を思い浮かべながら、少しでも教育現場に寄与できるようにという想いで業務に取り組んでいます。

※ 「教員が必ず育つ赴任経験」を目指した研修モデル開発に関する事業報告書を公開―東京都利島村における離島型教育DXの取組を支援
みずほリサーチ&テクノロジーズ:東京都利島村における離島型教育DXの取組を支援 (mizuho–rt.co.jp)

教育データ標準化の取り組み支援。医療DXの知見に学び、課題を乗り越えより良い未来に貢献

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教育DXを推進する上で、当社が高い関心を寄せているのが教育データの標準化です。デジタルコンサルティング部は社会政策コンサルティング部と連携し、昨年度関連する検討について文部科学省の支援を行いました。

伊澤:児童・生徒の付加価値の高い学びを実現するなどの意義もふまえ、教育に関するデータのうち相互運用性を図るべき項目に絞り、標準化の検討が推進されています。

地域によってデータの表記が異なると、データ利活用を推進する上で障壁となることが想定されます。したがって、たとえば全国の学校に固有の「学校コード」が設定されていますが、こうした標準化の拡充がさらに期待されます。

標準化の推進によって、データが収集・活用しやすくなることや、システム開発のコスト削減も期待されています。私たちデジタルコンサルティング部が培った教育DXの実績や全国自治体とのコネクションに加え、社会政策コンサルティング部が有する医療DXの知見も活かし、標準化に向けた取り組みを支援しました。

近藤:標準化にあたり、医療分野でこれまでどのようにデータの蓄積・分析を行ってきたか、そのプロセスを資料化してデジタルコンサルティング部に提供しました。教育分野ではどのように標準化するのが最適であるか、まずその検討材料を集めた形です。

教育現場とも緊密に連携しながら、標準化の推進に取り組む伊澤。その実現にはさまざまな困難があると話します。

伊澤:国、教育現場、事業者という異なる立場を踏まえ、現実的な標準化の方向性を見極めるのは決して容易ではありません。医療分野でも同様の課題があることを知り、前例から学ぶべく近藤さんと何度も意見交換を行いました。

その中で再認識したのは、最上流としてまず教育DXがめざす世界観を明確にし、そのために必要なデータの収集・活用を進めるべきだということです。

ステークホルダーの立場は違っても、「より良い人材を育てる」という方向性は一致すると考えます。ただし「良い人材」や「良い教育」の定義自体がなかなか一致しづらいのも教育分野ならではです。医療分野のように定量的な指標がないため、判断の根拠となるデータやエビデンスを、標準化の動向も意識しつつ収集・活用する必要があると考えています。

一筋縄ではいかない教育DX。チャレンジングだからこそ、他にはないやりがいがあると伊澤は語ります。

伊澤:教育は今大きな変革期を迎えていますが、たとえ指導内容や学ぶ環境が変わっても、教育そのものの重要性は今後も変わりません。私たちが関わっている議論は、数十年先の未来にも影響を与える可能性があるんです。そのため責任の重さと同時に、社会的意義のある仕事に携われる点にやりがいを感じています。

また個人的には、学生時代を懸命に支えてくださった先生方へ恩返しをしたいという想いも強いです。まず先生方の心身が健康でなければ、子どもたちにも良い影響を与えられないと思うので、労働環境の是正も含め、教育全体の変革に引き続き挑戦していきたいと考えています。

組織の専門性と多様性を発揮して新たな価値を創造し、「ともに実る」教育DXを

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教育DXに関するプロジェクトごとに、担当メンバーを柔軟にアサインしているデジタルコンサルティング部。お客さまの課題解決に最適な組織体制の構築をめざしています。

伊澤:ここに集まっているメンバーだけでなく、当部には教育DXに関する実績を持つコンサルタントが数多くいます。そして社会政策コンサルティング部以外の部署とも積極的に連携を図っており、これまで延べ30人程とチームアップしプロジェクトを推進してきました。

それぞれ強いパッションと高い専門性を持ちながら、教育学部で学んだ知識や、子どもを持つ親としての経験を持っているなど、バックグラウンドがとても多様です。さまざまな形で教育との接点があるため、多角的な観点からソリューションを追求することができます。

組織の専門性と多様性を活かしながら挑戦する教育DXの推進。伊澤、高橋、栗山、近藤の4人は、今後のビジョンを描く中で新たな仲間の活躍にも期待を寄せています。

伊澤:日本の産業競争力強化と社会イノベーション創出に向け、教育は今後ますます重要になると考えています。繰り返しになりますが多様なステークホルダーの声を聞くこと、そして共通認識を形成するためにデータ・エビデンスを活用すること。この2つを柱として社内外のステークホルダーとともに挑み、教育DXの成果をともに実らせていきたいと思います。

デジタル技術の活用は不可欠ですが、それは万能ではありません。データの利活用には目的に沿った事前の設計が必要であり、緻密な議論が求められます。強いパッションを持ち、議論に粘り強く取り組んでいただける方々が、新たに参画してくださるのを心待ちにしています。

高橋:教育に関する知識や経験以上に、私も変革に対するパッションが重要だと考えています。教育は誰もが何かしらの形で経験するものです。その経験を活かして、日本の未来を担う子どもたちのために貢献したいという熱意が、変革を可能にすると考えています。教育分野のテーマは幅広いので、専門外の最新動向にもアンテナを張り、多様な意見に耳を傾けられる方が向いていると思います。

栗山:教育現場のデジタル化や教育データの利活用はまだ十分とは言えない状況です。今後さらにDXの導入を進め、子どもたちや教員、そして社会全体にとってより良い未来を創ることが、私たちのミッションだと考えています。教育という大きな観点では、公教育だけでなく企業の人材育成なども含めてさまざまなテーマに関心を持ち、深く探究できる方が当社で活躍できると感じています。

近藤:私の主たる担当領域はヘルスケア分野ではありますが、一方で、これまで獲得した知見をヘルスケア分野だけに活用するのではなく、教育分野を含め、さまざまな分野に積極的に広げていきたいと思っています。

そのためにも、自身の専門分野で培った知見を他分野へ展開する中で、過去の実績やアイデアを組み合わせながら新たな価値を創造することが必要と考えています。そうしたテーマに積極的に挑戦できる方が、参加してくださるのを期待しています。

※ 記載内容は2024年8月時点のものです

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