―ケミトピックス(No.2/2024年6月~7月)― カナダ政府 PFAS規制の今後の方針及びPFAS報告規則の公表 他

2025年1月8日

サステナビリティコンサルティング第2部

鍋谷 佳希
後藤 嘉孝
井上 知也
庭野 諒
福山 健
吉田 陽

本レポートは、化学物質管理に関連する最新の動向や規制情報をまとめたものです。世界各地での法規制の更新、新たな化学物質の評価など、重要な情報を数ヵ月に一度のペースでお届けします。

【カナダ政府 PFAS規制の今後の方針及びPFAS報告規則の公表】

カナダにおけるPFAS規制として、カナダ環境気候変動庁(ECCC)とカナダ保健省が2023年5月に、「PFASに関する現状の報告書草案」を公表した。4,700を超えるPFASクラスがカナダ環境保護法(CEPA) 第64条に定められた、人の健康又は生態へのリスクが懸念される基準を満たしていると結論し、Schedule 1に収載を提案し、パブリックコメントを募集していた。
その後、2024年7月13日に現状報告書案およびリスク管理範囲案の第2版を公開した。当該報告書において、フッ素樹脂を除くPFASについて、第64条の基準を満たすと結論付けることが提案されている。
今後はPFAS含有泡消火薬剤の規制を初手として、その後に他の用途などを禁止するといった段階的な措置が検討されることとなっている。フッ素樹脂に対しては別の評価が検討される予定とされている。
また、2024年7月27日にCEPA 第71条に基づく特定のPFASに関する通知の規則を公表した。312種類のPFASを対象に、特定の製造・輸入者・使用者が2023年中にカナダで製造、輸入または製品の使用に関する情報について提出することを義務付けており、2025年1月29日までに報告する必要がある。312物質の中には、PTFEやPVDFなどの26種類のポリマーも含まれている。ガイダンスマニュアルには、具体的な報告の要件や方法が記載されているため、参考にされたい。

※Schedule 1に収載された場合、製造/使用/流通規制から排出規制にまでわたる幅広いオプションの中から適切な措置を導入可能となる。

Updated draft state of per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS) report
Revised risk management scope for per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS)
notice with respect to certain per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS) was issued in the Canada Gazette, Part I: Vol. 158, No. 30 – July 27, 2024
Guidance manual for responding to the: Notice with respect to certain per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS)

【化審法 PFOAとその塩及びPFOA関連物質の一特指定】

2024年7月5日化審法施行令が改正され、9月10日より「ペルフルオロアルカン酸(構造が分枝であって、炭素数が八のものに限る。)(PFOAの異性体)又はその塩」、2025年1月10日より「ペルフルオロオクタン酸関連物質」が第一種特定化学物質に指定されることとなった。当該物質群は2019年にPOPs条約付属書Aへと指定されて以来、個別具体的な対象物質については3省合同会合にて議論がなされてきた。「ペルフルオロオクタンスルホン酸関連物質」に該当する物質はPFOI(CAS RN:1763-23-1)、8:2FTOH(CAS RN:864551-34-8)に加えて厚生労働省令、経済産業省令、環境省令で定めるもの、と規定されており、10月9日まで省令で定める物質案に関するパブリックコメントが募集された。パブリックコメントとその対応を受け、省令で定められる具体的なPFOA関連物質については11月ごろに公布され、2025年1月10日に一特指定が施行される見込みである。

「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました (METI/経済産業省)

【政府によるGHS分類結果の公表に伴う皮膚等障害化学物質の拡大】

2024年6月21日、2023年度の政府によるGHS分類結果が公表された。事業者が作成するラベル・SDSの参考として、毎年政府によるGHS分類が実施されている。労働安全衛生法で規定されている皮膚等障害化学物質のうち一部は、通達において「国が公表するGHS分類の結果(略)「皮膚腐食性・刺激性」、「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」及び「呼吸器感作性又は皮膚感作性」のいずれかで区分1に分類されているもの」と定義されており、今般のGHS分類結果を受け、膚等障害化学物質に該当する物質が拡大する。当該物質群及びそれを含む製剤を製造並びに取り扱う場合には、不浸透性の保護衣、保護手袋、履物又は保護眼鏡など適切な保護具の使用が義務付けられる。

令和5年度(2023年度)厚生労働省・経済産業省・環境省によるGHS分類結果 | 化学物質管理 | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp)
(参考)労働安全衛生規則_施行通達

【ECHA 六価クロムのREACH規則に基づく規制が認可から制限に切り替えを検討】

2024年6月5日、ECHAはREACH規則に基づき、六価クロム化合物に対する制限提案を作成するための用途及び代替物質について情報提供を依頼するパブリックコンサルテーションを実施した(パブコメ締切は2024年8月15日)。1回目は2023年12月に実施された六価クロム化合物2物質に対するものだったが、残念な代替を回避し実施可能性と強制力を確保するため、さらに六価クロム化合物の対象範囲を12物質(認可対象物質にリストされている11物質に加え、1物質(クロム酸バリウム)を追加)に大幅に広げた。これは、Chromium trioxideに対して実に200件にも上る認可申請(エッセンシャルユースの申出)が事業者からなされたことを受け、ECHAが対応可能な方策を検討した結果、個別申請を審査する必要がある認可プロセスではなく、制限提案をECHAがまとめる形で議論を進めることができる制限プロセスに議論の場を移す必要があると判断したことが背景にある。

Call for evidence (uses and alternatives) on certain hexavalent chromium substances to support the preparation of a restriction proposal
Call for evidence on certain chromium (VI) substances to support the preparation of a restriction proposal
Restriction proposal on chromium (VI) to cover more substances

【米国EPA 最近の有害物質規制法(TSCA)の動向(n-メチルピロリドン(NMP)の規制を提案、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタンのリスク評価草案を公開)】

米国EPAは、2024年6月14日、有害物質取締法(TSCA)に基づき、n-メチルピロリドン(NMP)の規制を提案した。製造、加工、流通及びいくつかで労働現場でのNMPの使用を禁止することを提案している。また、適切なばく露低減対策による労働者の保護、消費者製品への含有制限等も提案している。日本では労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付義務対象物質、皮膚等障害化学物質等及び特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質に指定されており、既に労働者の保護義務が課されている。

また、米国EPAは2024年7月2日、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタンのリスク評価の草案を公表した。パブリックコメントを踏まえ、今後専門委員会等で更なる検討がされていく予定。

米国官報 1,1-ジクロロエタンおよび1,2-ジクロロエタンSACCピアレビューの通知
米国官報 TSCAに基づくn-メチルピロリドン(NMP)の規制提案

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