—ケミトピックス(No.1/2024年4月~5月)— ワシントン州、6PPDを含む自動車用タイヤを優先製品として指定 他

2024年8月

サステナビリティコンサルティング第2部

鍋谷 佳希
後藤 嘉孝
関 理貴
中元 昌広
庭野 諒
大矢 柚香
吉田 陽

本レポートは、化学物質管理に関連する最新の動向や規制情報をまとめたものです。世界各地での法規制の更新、新たな化学物質の評価など、重要な情報を数ヵ月に一度のペースでお届けします。

【カナダ政府 プラスチック登録簿への情報報告を義務付け】

カナダ政府は2024年4月20日に、特定のプラスチック樹脂およびプラスチック製品について、「連邦プラスチック登録簿」への情報の報告を義務付けることを通知した。本制度は、カナダに上市したプラスチック製品に関して、ライフサイクル全体での適切な管理を目指し、プラスチック汚染対策を強化する。対象となる製品は繊維製品、タイヤ、容器包装、漁具に至るまで、多岐にわたり、製造量・輸入量、素材などを報告する必要がある。なお、2024年4月にプラスチック汚染に関する条約策定に向けた第4回政府間交渉委員会(INC–4)がカナダのオタワで開催され、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際合意への策定に向けた議論が進んでおり、プラスチックの適切な管理が求められている。

カナダの連邦プラスチック登録簿

【化審法 NPEの二特指定に係る動向】

2023年9月に開催された3省合同審議会において、NPEのリスク評価の結果に基づき、当該化学物質を第二種特定化学物質に指定するとともに、当該化学物質を使用する水系洗浄剤(水で希釈して使用する洗浄剤)について、技術上の指針の遵守および環境汚染防止のための表示の義務が課される製品に指定することが適当であるとの結論が得られた。
2009年改正により、化審法にリスクベースの評価体系が導入されて以降、評価スキームに基づき第二種特定化学物質に指定される物質としてはNPEが初となる。指定に係る措置の概要は以下のとおりであり、NPEの製造者・輸入者、NPE等(NPE及びNPEを使用する水系洗浄剤)の取扱事業者は施策の動向に注視が必要である。

① 事前の予定数量、事後の実績数量の届出の義務【NPEの製造者・輸入者】
② 取扱いに係る技術上の指針の公表【NPE等の取扱事業者】
③ 環境の汚染を防止するため措置等に関し表示すべき事項の公表【NPE等の取扱事業者】

今後の動向は以下が予定されている。
2024年夏以降:公布(改正政令、技術上の指針、表示義務に係る告示)
2025年春以降:施行(改正政令、技術上の指針、表示義務に係る告示)
経済産業省「NPEの第二種特定化学物質への指定について」

【環境省 海プラデータベース(AOMI)を公開】

環境省が開発した海洋プラスチックごみマッピングデータベース「Atlas of Ocean Microplastic(AOMI)」が公開された。本データベースは、世界中の機関や研究者、政府から提供された海洋表層マイクロプラスチックのモニタリングデータを収載しており、調査地点・調査密度・粒子密度を地図上に表示することが可能である。国内外の専門家による国際専門家会合の議論を経て、環境省から「漂流マイクロプラスチックのモニタリング手法調和ガイドライン」が公開されたことにより、統一的な手法でマイクロプラスチックのモニタリングが可能となった。本データベースに「漂流マイクロプラスチックのモニタリング手法調和ガイドライン」にのっとった比較可能なデータが格納されることで、世界中のマイクロプラスチックのモニタリングデータが比較可能となった。本データベースにより、国際的に比較可能なモニタリングデータに基づく一層のプラスチック汚染対策が推進されることが期待される。

海洋プラスチックごみのマッピングデータベース「Atlas of Ocean Microplastic(通称:AOMI)」
(参考)漂流マイクロプラスチックのモニタリング手法調和ガイドライン

【欧州委員会 REACH規則において環状シロキサンを制限】

REACH規則において3種類の揮発性環状シロキサン(D4(CAS RN: 556-67-2)、D5(CAS RN: 541-02-6)、D6(CAS RN: 540-97-6))を制限する改正法令が採択された。シリコーンポリマーの製造におけるモノマーなどの一部用途を除いて、0.1wt%以上含有する物質および混合物の上市禁止や、ドライクリーニング用溶剤としての使用が2026年6月より禁止される。D4、D5、D6は主に、シリコーン製品の製造原料や化粧品成分として利用されており、欧州化学品庁(ECHA)は2018年にvPvB(高難分解性および高い生物蓄積性)を理由にSVHC(高懸念物質)に特定、日本の化審法においてはD4とD6が監視化学物質として指定されている。2023年6月にECHAはD4、D5、D6をストックホルム条約(POPs条約)の対象物質として提案する方針を掲げており、引き続きその動向に注目が集まっている。

(参考)D4、D5、D6のREACH規則に関する欧州議会および理事会の規則(EC)No 1907/2006の附属書XVII改正
(参考)欧州連合によるD4、D5、D6のストックホルム条約附属書Bへの収載提案

【欧州化学品庁(ECHA) PFASの一種であるPerfluamine(ペルフルオロトリプロピルアミン)のSVHC提案意図登録】

Perfluamine(ペルフルオロトリプロピルアミン)(CAS RN:338-83-0)をSVHC提案意図登録(Registry of Intentions)がベルギーよりECHAに提出された。SVHCへの指定根拠はvPvB(高難分解性および高い生物蓄積性)である。今後は、8月までに提案書が提出され、内容がECHAにて確認される。ペルフルオロトリプロピルアミンはC5-C18カテゴリーに分類されるPFASであり、電気、電子、光学機器、機械、車両の製造などに幅広く利用されている。日本国内では化審法において一般化学物質であるとされているが、経済産業省の化学物質安全性点検結果により難分解性であることが示されている。

(参考)PerfluamineのSVHC提案意図登録

【米国環境保護庁(US EPA)PFASに対する試験を事業者に要求】

米国環境保護庁(US EPA)は、PFAS国家試験戦略の一環としてPFASの1種である2-(N-メチルペルフルオロ-1-オクタンスルホンアミド) エタノール (NMeFOSE)(CASRN: 24448-09-7)に対して、本物質を製造・輸入する2社に対して試験命令を発出したことを公表した。
US EPAは、2021年10月に「PFAS戦略的ロードマップ(PFAS Strategic Roadmap: EPA’s Commitments to Action 2021-2024)」を公表し、PFASの対応を進めている。同時期に公表されたPFAS国家試験戦略では、評価を行うための物理学的性状、有害性情報、環境中運命については、PFASを構造情報等から特徴付けすることでより小さな24種類のカテゴリーに分割してデータ取得を検討する方針が示されている。
PFAS国家試験戦略の一環として、これまでに3種類のPFAS(HFPO-DAF (CASRN: 2062-98-8)、6:2 FTSB (CASRN: 34455-29-3)、HFPO (CASRN: 428-59-1))の試験命令が発出されていた。今回、新たに4つ目の試験命令として、2-(N-メチルペルフルオロ-1-オクタンスルホンアミド) エタノール (NMeFOSE)(CASRN: 24448-09-7)が対象とされた。なお、本物質は米国内の化学物質管理法令の規制対象ではなく、またPFAS国家試験戦略において候補として示された物質ではないが、急性毒性および特定標的臓器毒性、PFOSを含むNMeFOSEの生体内変換生成物からの健康影響に関する懸念が特定されたとしており、当該物質およびそのカテゴリーに属する物質の今後の規制動向が注目される。

国家PFAS試験戦略の一環としてPFAS試験命令を発出
(参考)PFAS戦略的ロードマップ
(参考)国家PFAS試験戦略
(参考)TSCA第4条に基づく試験命令一覧

【ワシントン州 自動車用タイヤに含まれる6PPDの代替検討へ】

Safer Products for Washington(SPW)プログラムでは、消費者製品中の有害化学物質を規制するため、対処すべき化学物質を優先化学物質として指定し、当該物質が含まれる消費者製品(優先製品)の規制措置を検討している。2024年1月、米国ワシントン州はギンザケの急性死亡の原因物質である6PPDキノンおよびオゾンと反応して6PPDキノンを生成する6PPDを優先化学物質として指定し、3月には6PPDを含む自動車用タイヤを優先製品として指定する法案を承認したことを公表した。今後、6PPDについて、より安全な代替物質の利用可能性が検討され、代替物質の利用が可能な場合、6PPDを含む自動車用タイヤの使用禁止・代替義務が、代替物質の利用が不可能な場合、報告義務が課されることとなる。

6PPDを含む自動車用タイヤを優先製品として指定
(参考)優先化学物質への対応:タイヤの劣化防止剤6PPDおよび6PPDキノン

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