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公立病院整備事業へのPFIの導入について(2/3)

社会動向レポート
PFI導入に当たっての留意点

コンサルティング第2部
研究員 加藤 隆一
研究員 長谷川 薫
研究員 石井 由佳

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3先行事例から考える病院PFIのスキーム

(1)病院PFIの事例

これまでに病院PFIは17件事業化されており、その概要を図表3に示した。

事業方式は17件中14件が施設完成後に所有権を公共に移転するBTO方式(Build-Transfer-Operate)であり、事業期間中に民間事業者が施設を所有するBOT方式(Build-Operate-Transfer)は2件(宿舎等にBOT方式を採用している高知医療センター整備運営事業を除く)のみである。また、既存施設を改修し、維持管理・運営を行うRO方式(Rehabilitate-Operate)を含む。)や、整備を含まずに維持管理・運営を行うO方式(Operate)を採用する事業も8事業ある。

維持管理・運営期間は15年~20年が14件、25年~30年が3件といずれも長期間にわたる。

業務範囲として、一般的な維持管理業務である施設・設備の保守、修繕、植栽、警備業務については全病院PFIで民間事業者の業務範囲となっている。一方で、医療関連サービス業務にあたる、リネン・洗濯、消毒・滅菌、食事提供、検体検査、医療事務、医薬品管理、医薬品調達、物品管理、経営支援業務は、初期の病院PFIでは民間事業者の業務範囲とされていたが、近年実施された4事例では概ね民間事業者の業務範囲外とされ、業務範囲はスリム化している。また、病院PFIでは上述のような、様々な業務が民間事業者の業務範囲となることから、これらの業務を統括する統括管理業務を設けることもあり、10件で実施されている。

応募者数は初期の病院PFIでは3~4者の応募があったが、その後は長らく1~2者の応募が続き、競争率は高くなかった。しかし、業務範囲から医療関連サービス業務が外れた「長崎市新市立病院整備運営事業」や「大阪府立成人病センター整備事業」では応募者数がそれぞれ3者、4者となっている。

図表3 病院PFI事例

図表3-1
  1. ※1 計画時点の数値であり、実際の整備内容と異なる場合もある。
  2. ※2 平成31年3月に事業期間を満了後、令和元年度から第2期のPFI事業を開始
  1. (資料)公表資料等をもとにみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社作成

図表3-2
図表3-3
  1. ※3 公募中の事業であるため、落札価格ではなく、予定総額を記載
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