ページの先頭です

社会動向レポート

地域ごとの“MaaS+”

MaaSの現状と、わが国でMaaSを導入する上での重要な2つの視点(3/3)

経営・ITコンサルティング部 西脇 雅裕

3. わが国におけるMaaSの在り方
―地域ごとのMaaS+―

以上の2つの視点を踏まえ、わが国において求められるMaaS+を整理する。図表6で示した地域の内、求められるMaaS+の違いが特に顕著に現れると考えられる、大都市(首都圏と大阪圏)と地方都市を一例にとり、交通特性と既存の交通課題、それら特性や課題に応じて求められるMaaS+の一例を、図表7に整理する。

まず、大都市(首都圏と大阪圏)については、鉄道やバス、タクシーなどの多様なモビリティが整備されており、それらモビリティの利用割合も高く、さらにライドシェアリング(二輪車)等の新たなモビリティが出現している。また、単一の公共交通のみでは移動しにくい地域が一定数存在する点、道路の渋滞や公共交通機関の混雑及び遅延が多い点、公共交通機関の乗り入れが複雑で、その土地に馴染みのない移動ユーザは公共交通機関を利用しづらい点などが、既存の交通課題として挙げられる。

この時、公共交通機関だけでなく、新たに出現しているモビリティを含めた多様なモビリティの情報が集約され、さらに、複雑な鉄道駅等の構内情報や渋滞情報など、今まであまり連携されていなかった情報を取り入れたMaaS+が求められるであろう。これにより、自家用車に限らず様々な移動手段を組み合わせにより様々な目的地にスムーズに移動することができ、移動ユーザの利便性が大きく向上することが期待される。また、大都市(首都圏と大阪圏)では、移動する目的が多様であることから、様々な移動の目的と連携したMaaS+に移動ユーザは利便性を感じ、MaaS+の利用が促進されるであろう。

他方、地方都市については、公共交通機関がほとんど整備されておらず、自家用車による移動が一般的である。こうした地域の課題としては、目的地までの距離がある点、交通事業を成り立たせることが困難である点、高齢者等の交通弱者は自家用車以外で移動することが困難である点などが挙げられる。

こうした地域のMaaS+のあり方としては、乗り合いモビリティを導入し、そのモビリティを予約できるMaaS+が期待される。地域住民のリアルタイムのニーズに合わせて送迎するオンデマンド型の移動サービスは、特に交通弱者の多い地方都市ではニーズが高いことが推察される。また、特に高齢者の多い地域では、医療機関への診療等のための移動ニーズも多いことが想定されることから、こうしたニーズの高い目的地へのスムーズな移動に特化した仕組みを作ることも一案かもしれない。ただし、地方都市の中には、移動ニーズが少ない地域も一定数存在することから、こうした地域においては、ビジネスモデルや事業の運営方法等に関する工夫が必要になる。

本稿では、MaaSの現状について整理したほか、わが国で求められるMaaSの視点及びMaaS+というあり方を提唱した。移動ユーザの利便性を大きく向上できるポテンシャルを秘めるMaaS。ただし、移動ユーザが求めるサービスは多様であり、また地域ごとにサービスの特色も変わる。より利便性が高く、日本の地域特性に合った、日本ならではの“MaaS+”の実現に期待したい。


図表7 利用する交通手段から見た地域の類型
図表7

  1. (資料)みずほ情報総研作成

  1. (1)MaaS Alliance Webページ
  2. (2)国土交通省国土交通政策研究所「国土交通政策研究所報」第69号―2018年夏季―
  3. (3)Whim Webページ
  4. (4)moovel Webページ
  5. (5)Qixxit Webページ
  6. (6)WILLER Webページ
  7. (7)トヨタ自動車 Webページ
  8. (8)WHILL Webページ
  9. (9)UBER Webページ
  10. (10)Lyft Webページ
  11. (11)Grab Webページ
  12. (12)ドコモ・バイクシェア Webページ
  13. (13)Beeline Webページ
  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
ページの先頭へ