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社会動向レポート

PPP/PFIの特徴を活かすための7つの留意点(1/2)

戦略コンサルティング部
主席研究員 石川 裕康
上席主任研究員 三浦 由紀子
上席主任研究員 井上 大輔
主任研究員 菅生 真希
研究員 石井 由佳


はじめに

政府では官民連携を積極的に推進している。

2023年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」でも、経済社会を支える社会資本整備の一環として、公共サービスを効率的かつ効果的に提供するPPP/PFIの取組みの推進が掲げられた。内閣府PPP/PFI推進室が2023年6月に改定した「PPP/PFI推進アクションプラン」では、PPP/PFIを新しい資本主義の中核となる新たな官民連携の柱として位置づけ、事業規模目標30兆円に向けて2022~2031年度の10年間の重点分野における事業件数ターゲットを575件に設定した。この575件という件数目標は、1999年のPFI法の施行から2021年度末までのPFI事業の累計件数が932件であること、昨年設定した2022~2026年度の5年間の件数目標が70件であったことを考えると、アクションプランに「野心的な」と記載されているとおり高いターゲットが新たに設定されたといえる。

一方、近年、PPP/PFI(以下、「PFI」「PFI手法」という。)では、事業の増加に伴い、公募をしても応募者のいない事業、事業実施後に問題が生じた事業、VFMの低下等いくつかの課題が生じている。

みずほリサーチ&テクノロジーズは、我が国のPFI法の制定より4年早い1995年からPFI等の調査研究を開始し、業歴は2024年で約30年、PFI関連の調査実績は800件を超える。これまでの経験から、PFIは民間事業者の創意工夫の発揮により財政負担の縮減や公共サービスの向上はもとより、国や地方公共団体等が抱えている社会課題の解決に有効であると認識している。そこで、公共の立場でPFIの検討・事業化を進められる方や民間の立場でPFIに取り組まれる方等に対して、これからも効果的にPFIが実施され発展していくことを期待して、PFIを実施する際に留意するべき点を本レポートでまとめる。

1. PFI手法の特徴について

PFI手法は公共施設等の整備・維持管理・運営等を効率的かつ効果的に行う手法であり、従来通りの発注手法(以下、「従来手法」という。)と比較すると、下記の7点の特徴があるが、これらの特徴は条件設定によってはメリットではなくデメリットにもなりうる。PFIの特徴を有効かつ適切に活かすには、事業の特性に応じた事業条件の設定が重要である。


図表 PFI 手法の特徴
図表1

  1. (資料)みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

2. PFI手法の特徴を有効かつ適切に活用するための留意点

1. で整理したPFI手法の特徴を有効かつ適切に活用するための留意点は、先述した7点の特徴ごとに次のように考察される。

(1)性能発注・要求水準の留意点

PFIにおける性能発注について、「性能発注にという意見や、反対に「性能発注にすると品質が確保されなくなる」という意見を聞くことがあるが、これらの意見はいずれも性能発注の一面しか捉えていない。

例としてPFIにおける清掃業務を挙げる。実施されたPFI事業で、清掃業務に性能発注を採用し、要求水準書に「利用者が快適に施設を利用できるよう、日常的に施設の清掃を行うこと」としか規定しなかった事例がある。これでは、公共側が求める清掃業務の性能条件(品質、水準、頻度等)は明確になっておらず、民間事業者が提案書を作成するのも難しい。また、実際に業務が実施された際に業務内容が要求水準を満たしているのか判断することも難しい。「性能発注にすれば民間事業者の創意工夫が発揮される」というわけではなく、性能発注を導入する際には、公共側が求める条件・水準(要求水準)を明確にしておくことが必要である。

また、清掃業務の品質を考えた場合、清掃内容(実施方法、頻度等)のみを規定した仕様発注では、例えば想定よりも利用者が増えて汚れるようになったとしても、仕様を変えない限り改善することはできないが、性能発注で実施後の条件を規定していれば、求める品質が満たされていない場合は、改善を求めることが可能であり、「性能発注にすると品質が確保されなくなる」というわけではない。

以上のとおり、PFIにおける性能発注は、公共側が求める条件を明確にし、その条件(要求水準)を具体的に提示し、民間事業者の創意工夫の発揮が期待される部分については、その達成方法を民間事業者の提案に委ねるというのが正しい考え方である。

なお、例として挙げた清掃業務については、近年のPFIでは、メンテナンスフリーの材質が提案されたり、除塵と洗浄等を行う清掃ロボットの活用が提案されたりする等、施設整備と維持管理が一体となっているPFIならではの様々な創意工夫が発揮されるようになってきている。

(2)民間資金活用の留意点

PFIはPrivate Finance Initiativeの略で、PFI法の正式名は「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」であるので、「民間資金を活用しないとPFIにならない」という意見を聞くことがあるが、これは誤解である。

以前実施された施設整備費にほぼ全額民間資金を活用したPFI事業では、公共が民間事業者に30年間の分割で支払うこととして30年間の固定金利にしたところ5%超の金利水準となり、金利負担が大きくなってしまった。PFIの事業開始後に、民間資金から地方公共団体の起債に借り換えをすれば約30億円の削減が見込まれると試算された結果、その他の要因もあり、PFIの契約が事業期間の途中で解除され従来手法に戻った。このPFI事業は、当初の公募段階において起債を活用して事業化をしていれば、よりVFMが出ていたであろうし、PFIが途中解除されなかった可能性もあると考える。

それでは、PFIの資金調達は、調達金利が低い方を選択すればよいのか。PFIに民間資金を活用することによるメリットとして、財政支出の平準化が挙げられる。それ以外にも、民間事業者が提案書を作成する際に金融機関によって事業計画の実現性がチェックされる効果や、PFIの事業期間中に民間事業者の業績が悪化した場合に、金融機関から公共にその旨の連絡が来る効果も大きなメリットである。特に、民間事業者が需要変動リスクを負担する事業では、民間事業者の業績が悪化するリスクが高くなるため、金融機関によるこれらの機能(事業計画の実現性のチェック、民間事業者の業績チェック)の必要性は高いと言える。

ただし、金融機関によるチェック機能を期待する場合でも、民間資金の活用については、施設整備費の全額に民間資金を活用するのではなく、財政負担の縮減効果等も照らしながら、一部の金額にすることの検討も必要である。

  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。

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