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固体高分子形燃料電池シミュレーター P-Stack® 解析事例(1)

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解析事例(1)実機セル・スタックの発電性能予測

構造・運転・部材条件に対する実機セル~スタック(数100枚積層)の発電特性と内部分布予測

発電面積260cm2のセルを積層したモデルスタック(1セル1冷却)の構造条件と作動条件がスタック性能に与える影響を解析しました。下図に100枚積層したスタックに対して、負荷電流密度0.2 A/cm2、アノード利用率75%、カソード利用率50%、および両極の相対加湿度50%条件下における温度分布(左図)と電流密度分布(右図)を示します。スタック全体の温度分布をみると、発電に伴う発熱により冷却水の下流付近になるほど高温になっていることがわかります。また、電流密度分布をみると、カソード上流付近の電流密度が低く、カソード中央付近で電流密度が高くなっていることがわかります。これは、セルが対向流(アノードとカソードでセルへのガス流入方向が逆になっている流入様式)であるためで、カソード側で発電により生成した水がカソード下流付近(アノードにとっては上流)で電解質膜を介してアノード側に移動することによって、中央付近の電解質膜抵抗が低下した結果、発電量が増加したものです。さらに、電流密度分布をセンターセル(スタック中央付近のセル)とエンドセル(スタック端部付近のセル)で比較すると、エンドセルにおける流量不足によって電流密度の不均一性が増大していることがわかります。

図1

100セル積層スタックにおける0.2 A/cm2条件下の温度分布(左)、電流密度分布(右)

次に、同じ作動条件におけるマニホールド断面縮小による発電性能への影響を解析しました(下図左側)。マニホールド断面積が小さくなると、各セルへの供給ガス分配の不均一性が拡大、それに伴いエンドセル(No.0)付近のセルでガス流入量が低下します。ガス流入量が低下すると過電圧が増大するため、エンドセル付近でセル電圧の低下が発生していることがわかりました。さらに、出力電流密度が発電性能へ与える影響も解析しました(下図右側)。低電流密度条件(0.2 A/cm2)では、セル間の最大電圧差は5 mV以下に抑えられていますが、高電流密度条件(1.0 A/cm2)においては15 mVまで最大電圧差が増大しています。特に、エンドセル(No.0)近傍での電圧低下が顕著です。これは、高電流密度時における生成水量増加に加え、エンドセルにおける放熱によって液水が増加した結果、ガスの供給阻害(フラッディング)が発生したことによる性能低下であることがわかりました。

図2

100セル積層スタックにおける異なる構造・運転条件下の発電性能

最新のP-Stackでは、実機サイズのセルだけでなくスタックの解析も実用的な時間で実行することが可能となっています。低負荷ホールド時の解析では、スタック全体が十分に定常状態に達するまで(約60秒)の解析を、5セルあたり1CPUの計算機資源を用意すれば約半日(*)で実行することが可能です。下図は、当社で実行した300セル積層したスタック(車載用に相当)における0.2 A/cm2時の温度分布(左図)と電流密度分布(右図)です。

図3

300セル積層スタックにおける0.2 A/cm2条件下の温度分布(左)、電流密度分布(右)

  • *「P-Stack」は、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社の登録商標です。
  • *解析時間は実行環境に大きく依存します。

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