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固体高分子形燃料電池シミュレーター P-Stack® 解析事例(4)

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解析事例(4)25cm2セルの実測I-V比較と面内分布の可視化

実測I-V比較を再現しつつ、実験では観測できないセル内部の各種物理量の分布を予測

標準的なMEAの25cm2セルの各種運転条件におけるI-V実測値をP-Stackで再現していることを確認後、各種物理量の面内分布を可視化しました。 ここで、シミュレーションにおける各種物性パラメータは、P-StackのMEAパラメータ適合プロトコルに基づいてフィッティングされています。

下図に、両極RH60%(基準条件)、アノードRH80%/カソードRH40%(カソード低加湿条件)、両極RH40%(両極低加湿条件)における実測とP-StackのI-V特性グラフと、 P-Stackの計算結果から得た各運転条件における内部状態を示します。実験とP-Stackの結果はどちらも基準条件>カソード低加湿条件>両極低加湿条件の順にI-V特性が優れている結果を示しました。一方で、P-Stackを用いて各条件の面内分布に着目すると、基準条件ではカソード下流側のPEM含水量(A)が低く電流密度や温度の分布が不均一であることに対して、カソード低加湿条件のほうが均一なPEM含水量(B)に起因して電流密度・温度分布も共に均一であり、膜の耐久性維持の観点ではカソード低加湿条件の方が有利な運転条件であることが解析によってわかりました。また、両極低加湿条件の場合は、乾いた空気が入ることによりPEM含水量(C)は全体的に低くなり、これによって抵抗過電圧は増大してセル電圧が低下していることがわかります。さらに、過電圧によりPEM温度(D)が上昇し、電解質膜への負担が大きい運転条件であることが示唆されます。

図1
図2

次に基準条件と加圧条件(ゲージ圧50kPa)、低ストイキ条件(カソードストイキ1.2)における実測とP-StackのI-V特性およびP-Stackで可視化した各種内部状態を以下に示します。まず、P-Stackが実測のI-V特性を精度良く再現していることを確認しました。そのうえでP-Stackで得られた各運転条件における内部状態を確認すると、加圧条件に関してはI-V特性が最も優れている一方、カソードGDLの液水分布(A)から、リブ下に液水が滞留していることが確認できます。これは、カソード入口圧が高いことによる流速の低下が考えられ、このような結果を受けて、より排水性能の良いGDLや流路構造の設計指針策定に活用することが期待できます。次に、低ストイキ条件の分布を確認すると、カソード上流の一部を除いて酸素分圧(B)が低く、結果としてPEM電流密度(C)とPEM温度分布(D)に示すように、カソード上流付近で発電が集中し、それに伴ってPEM温度も上昇していることが確認できました。

図3
図4
  • *「P-Stack」は、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社の登録商標です。

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