単身高齢者世帯「都会で6割増」に備える

2025年1月17日

みずほリサーチ&テクノロジーズ 主席研究員

藤森 克彦

*本稿は、『週刊東洋経済』 2024年12月7日号(発行:東洋経済新報社)の「経済を見る眼」に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

国立社会保障・人口問題研究所は11月、2050年までの都道府県別世帯数の将来推計を発表した。注目されたのは、高齢期の単身者(一人暮らし)の増加である。例えば、50年になると、65歳以上人口に占める単身者の割合は、東京や大阪などの5都府県で3割を超えるという。

こうした報道を受けて未来を悲観した人もいるかもしれない。しかし、単身世帯の増加は成熟社会では生じることであり、50年までには四半世紀の時間がある。今から社会として備えればよいことだ。

まず、将来推計を概観すると、20年から50年にかけてすべての都道府県で65歳以上の単身高齢者は増加する。その増加率の範囲をみると、5%(高知)~87%(沖縄)と幅広い。とくに増加率が60%を超える都道府県は9つあるが、そのうち5つは愛知、埼玉、神奈川、千葉、東京である。単身世帯の増加は、大都市圏で著しい。

では、なぜ単身高齢者は増加するのか。これは、2つの要因から説明できる。1つは、人口要因である。例えば、65歳以上人口に一定割合の単身者が存在すれば、同人口の増加に伴って単身高齢者は増えていく。もう1つの要因は、ライフスタイルの変化である。人口が増加しなくても、親と子の別居や未婚化など世帯形成行動の変化によって単身世帯は増える。

先述した単身高齢者の増加率が高い9つの都県では、65歳以上の人口増加と、ライフスタイルの変化がともに高い水準で起こる。このため、増加率が60%を超える。

一方、地方圏をみると、26の県では、今後、65歳以上人口は減少する。人口減少は単身世帯の増加にマイナスに作用するが、ライフスタイルの変化が人口減少を上回るため、単身高齢者は緩やかに増えていく。換言すれば、未婚化や別居化など世帯形成行動の変化は、地方圏でも進んでいく。

では、こうした変化にどのような対応が必要か。第1に、高齢期に入る前から地域で居場所を確保することである。今後、未婚化などによって身寄りのない単身高齢者が増えていくが、居場所は孤立を防ぐ場となりうる。何らかの活動目的のために集まるというよりも、居場所にいることやそこでの雑談が、高齢期の単身者を見守り、互いのケアにつながっていく。

第2に、身寄りのない高齢者に伴走しながら、必要に応じてほかの福祉サービスにつなぐ機能である。住宅確保の相談から死後対応まで長期の支援が求められることも少なくない。そこで、地域の福祉団体や、医療・介護事業者、民間企業などが連携して支援のネットワークを組むことも必要になろう。そのうえで、どの機関が中心になるかは地域の状況によって異なるが、信頼性を確保するためにも、公的機関の関与が求められる。

第3に、個人として一人暮らしに備えることも大切だ。例えばエンディングノートを作成して、信頼できる他者に託すことなども重要になる。

高齢期に一人暮らしになることは、誰にでも起こりうる。どの地域で一人暮らしをしても、他者との関係性を保ち、尊厳のある人生を送っていける社会を構築したい。

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