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COMSOL Multiphysics® マルチフィジックスシミュレーションソフトウェア 適用事例 (1)

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自動車排ガス浄化シミュレーション

SCRシステムによるNOx低減効果の再現と影響因子の調査

直径100[mm]の排気管に、セル数200[cpsi]、壁厚12[mil]、長さ100[mm]のSCR触媒を装着したSCRシステムのNOx低減効果について解析しました。排気ガス温度350[℃]、SV値25000[1/h]、入口NO、NO2濃度500[ppm]の条件化において、NH3(濃度500[ppm])がノズルからパルス噴射された場合のNOの濃度分布の時刻暦(左図)およびNH3の濃度分布の時刻暦(右図)を下図に示します。NH3が触媒に到達後、触媒に吸着したNH3とNOxとの反応によって、排気ガス流入から2.5秒後および5.0秒後には触媒後方のNO濃度が大きく低減されていることが確認できます。また、触媒後方のNO濃度が排気管下方で濃くなっていますが、これはノズルからのNH3噴射速度が弱いことから触媒下方までNH3が十分に届かず、触媒上方に比べて触媒下方のNH3吸着量が少ないことに起因します。

図1-a

NOの濃度分布

図1-b

NH3の濃度分布

次に、温度条件、流入するNOxの比率(NO濃度とNO2濃度の割合)を変化させた場合の影響を解析しました。下図に排気ガス温度が200[℃]と350[℃]の場合のNOの濃度分布と出口における平均濃度の時間変化を示します。低温である200[℃]ではNOxの低減効果は弱く徐々にNOx量(青線:NO、緑線:NO2)が減っている一方で、高温環境である350[℃]ではのNH3流入直後にNOx量が急激に減少しており、NOxの低減効果は排気ガス温度に非常に影響を受けることが確認できます。

図2

排気ガス流入から5.0秒後のNO濃度分布

図3

NO、NO2の排気管出口における平均濃度時間変化

上記は流入するNOxの比率がNO:NO2=1:1の結果でしたが、このNOxの比率もNOxの低減効果に大きく影響を与えます。NOxの低減率をNOxの比率ごとに温度についてプロットした結果を以下に示します。NOとNO2の量が1:1であることがより大きなNOx低減効果を発揮していることがわかります。これは、この例題における温度環境下ではFast reactionと呼ばれる、NOとNO2が1:1で反応する化学反応が支配的であることに起因します。したがって、より大きなNOx低減効果を発揮するためには、SCR触媒の前方に設置する酸化触媒などによって、NOとNO2の流入量が同等になるように調整することが求められます。

図4

NOx低減率の温度、NOx比率依存性

最後に、温度およびNOx比率の条件はそのままで(温度:350[℃]、NO:NO2=1:1)、ノズルからのNH3の噴射速度を変えた結果を以下に示します。ノズルからのNH3の噴射速度が遅い場合には触媒下方でのNOx除去効果が明らかに働いていない一方で、噴射速度が速い場合にはNH3が触媒上に均一に行き渡り、触媒全体でNOxの除去効果が発揮されていることがわかります。

図5-a

排気ガス流入から5.0秒後のNO濃度分布

図5-b

排気ガス流入から5.0秒後のNH3濃度分布

図6

NOx低減率のノズル噴射速度依存性