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COMSOL Multiphysics® マルチフィジックスシミュレーションソフトウェア 適用事例(2)

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リチウムイオン二次電池シミュレーション

1実サイズラミネート型セルの性能解析

下図(左)に示す電極面積300[cm2]、負極(LiC6)、正極(LiMn2O4)、セパレータ、集電板(Cu/Al)の厚さがそれぞれ100, 183, 52, 20[μm]のラミネート型リチウムイオン二次電池に対して、放電レートの違い(1C/10C)によるSOC分布への影響について解析しました。ここでは、リチウムイオン二次電池モデルとして、正極・負極反応式(Buttler-Volmer式)、電解質・電極内のLi+濃度保存式と電流保存式、および過電圧と電極材料固有のエントロピー変化による発熱、ジュール熱を考慮したエネルギー保存式を連成した専用モデルを構築しています。下図(右)に示すのは、セル電圧3.0[V]時の負極側SOC分布の比較ですが、高放電レート(10C)では無理に電流を掃引するため、電極および電解質内のLi+輸送が放電速度に追従できずセパレータ近傍のLi+のみが集中的に消費されており、容量を十分に使い切ることができない状態となることがわかります。

図1
図2

セル電圧3.0 V時のSOC分布の比較

次に、同構造のセルに対して集電タブ位置の違いによる反応・温度分布への影響を解析しました。両側タブ位置のセルに比べて片側タブ位置のセルでは、反応がタブ位置近傍に集中するためにLi+濃度が低下してSOC分布に偏りが発生するとともに、局所電流密度の集中による発熱量が増加し、セル温度が上昇していることがわかります。

図3

集電タブ位置の違いによる内部分布の比較(放電レート10C、セル電圧3.0V時)

2 4層積層セル組電池の不良セル解析

電極面積300[cm2]の正極・負極を4層積層したラミネート型リチウムイオン二次電池を4つ組み合わせた組電池モジュール(各セルを2並列-2直列(2p2s)で接続)を対象として、不良セルの存在によるモジュール内部分布への影響を解析しました。この解析では、各セルに電池の劣化状態を表す指標であるSOH(State Of Health)を導入し、2番目のセル(#2)だけ劣化が進行した状態を仮定しています。セル#2は劣化が進行しているため、セル#1と比較して#2に流れる電流が小さくなった結果(下図(左下))、#1と#2のセルのSOCに差が生じている(下図(右下))ことがわかります。このように、実機サイズモジュール内の接続違い(並列-直列)やモジュール間、セル間バランスなどの影響解析を数時間オーダーで検討が可能となっています。

図4

4層積層構造

図5
図6

不良セル(#2)による内部分布への影響(放電レート1C、セル電圧3.0V時)