ページの先頭です

社会動向レポート

社会生活基本調査にみる30年の余暇活動の変化

国民の余暇生活はどう変化したか(2/4)

社会政策コンサルティング部 主席コンサルタント 仁科 幸一

2. この30年の余暇活動の変化

(1)行動者数の変化

いずれのジャンルの行動者数も増加している(図表2)。しかし、行動者数の増加だけで、この30年で国民の余暇活動が活発化したとはいえない。それは人口変動の影響があるためだ。この30年間で、15歳以上人口は1,492万人(1986年比15.5%)増加している。

また、少子・高齢化が進んだ結果、本稿で分析対象とする15歳以上人口でみても、高齢人口の占める割合は13.4%から31.1%に拡大している。一方、50歳代以下の割合は軒並み縮小している。(図表3)


図表3 15歳以上人口の構造変化
図表3

  1. (資料)総務省統計局「毎年10月1日推計人口」より作成

(2)行動者率の推移

人口増加の影響を排除した行動者率の推移をみると、「趣味・娯楽」と「学習」はあまり大きな変化が見られない。これに対して、「スポーツ」と「旅行・行楽」は、行動者数は増加しているものの、行動者率は下落傾向にあることがわかる。(図表4)


図表4 行動者率の推移
図表4

  1. (資料)総務省統計局「社会生活基本調査」より作成

(3)年代別行動者率と行動者の年齢構成の変化

[1] 年代別行動者率の変化

行動者率の変化を年代別にみると、「スポーツ」については若年層の下落が顕著であること、「行楽・旅行」については全世代で行動者率が下落したことがわかる。(図表5)

「スポーツ」は、20~30歳代で15ポイント超、10歳代と40歳代で10ポイント超の大幅下落となっているが、65歳以上は7ポイント超ののびをみせている。

「旅行・行楽」は、すべての年代で行動者率が下落している。特に20歳代から40歳代、いうなれば働き盛り・子育て期にあたるすべての年代で5ポイント超の下落を示している。比較的時間に自由がきくと思われる10歳代後半と65歳以上の年代でも小幅ながら下落している。

「趣味・娯楽」は、10歳代から30歳代は微減、40歳代は微増と総じて大きな変化はないが、60歳代以上では5ポイント超の上昇を示している。

「学習」は、10歳代から20歳代前半、50歳代以上で上昇しており、特に前者の上昇が目を引く。これに対し、20歳代後半から40歳代は軒並み下落している。


図表5 年代別行動者率の変化
図表5

  1. (資料)総務省統計局「社会生活基本調査」より作成

[2] 行動者の年代構造の変化

人口構造の変化と行動者率の変化が相まって、行動者に占める高齢者の占める割合が大きくなった(図表6)。若さの象徴ととらえられがちな「スポーツ」の行動者に占める高齢者の割合ののびが最も大きいことは、象徴的な変化といっていいだろう。


図表6 行動者の年代構造の変化
図表6

  1. (資料)総務省統計局「社会生活基本調査」より作成

(4)行動者率の男女差の変化

ジャンル別にみると、「学習」と「趣味・娯楽」の行動者率は30年間の変化が小さい。これに対して、「スポーツ」、「旅行・行楽」は、特に男性の行動者率の下落が顕著である。(図表7)

男女差の変化に注目すると、「学習」、「趣味・娯楽」、「スポーツ」では男女差は縮小している。「旅行・行楽」では男女差が拡大しているが、これは男性の下落幅が大きいために男女が逆転した結果である。男女差は総じて縮小傾向にあるといっていいだろう。(図表8)


図表7 男女別行動者率の変化
図表7

  1. (資料)総務省統計局「社会生活基本調査」より作成

図表8 行動者率の男女差の変化
図表8

  1. (資料)総務省統計局「社会生活基本調査」より作成
  2. (注1)「男女差」は「男性行動者率-女性行動者率」。値が正の場合は男性> 女性、負の場合は女性> 男性。
  3. (注2)赤字は、当該年次の行動者率が高いことを示す。
  4. (注3)「男女差の変化」は、「2016年の男女差(絶対値)-1986年の男女差(絶対値)」で算出。値が正の場合は男女差が拡大、負の場合は縮小したことを示す。

(5)性・年代別行動者率行動者率の変化

男女ともに、若年層では「スポーツ」離れ、広い年代で「旅行・行楽」離れが進んだことがわかる。(図表9)

「学習」は、10歳代後半の男女、20歳代前半の男性、50歳代以上の女性は5ポイント以上ののびを示している。一方、20歳代後半から30歳代の女性は5ポイント以上下落している。この中でも、65歳以上の女性ののびは11ポイントと最も大きい。また、いずれのジャンルも下落傾向にある20歳代前半以下の年代で「学習」だけが大幅にのびていることは目を引く。

「スポーツ」は、男性については50歳代以下のすべての年代で下落幅が5ポイントを超えており、20歳代から40歳代では10ポイントを上回る下落となっている。同様に女性も、10歳代後半から40歳代に及ぶ幅広い世代で大幅な下落を示している。特に10歳代後半から20歳代前半の下落幅は20ポイント前後と、全ジャンル・世代で最も大きな下落幅となっており、若い女性のスポーツ離れが顕著である。その一方、60歳代以上では、男性の変化は小さいが、女性は10ポイントに迫るのびをみせており、若年層のようなスポーツ離れはみられない。

「趣味・娯楽」は、50歳代以上の女性で5ポイント以上ののびを示している以外、大きな変化はみられない。

「旅行・行楽」は、男性の下落が顕著であり、20歳代から60歳代前半までの男性では10ポイントを上回る大幅な下落幅を示している。一方、女性では20歳代前半が5ポイント下落を示している以外はおおむね微増・減となっている。



図表9 性・年代別の行動者率の変化
図表9

  1. (資料)総務省統計局「社会生活基本調査」より作成

(6)年代別の男女差の変化

「旅行・行楽」は男性、「スポーツ」は女性の下落により男女差が縮小した。(図表10)

各ジャンルの男女差の動向に注目すると、「学習」は、20歳代以下と65歳以上で5ポイント以上の縮小を示している。10歳代前半と20歳代後半の縮小は男性の行動者率ののび、20歳代後半の縮小は女性の行動者率の下落、65歳以上の縮小は女性の行動者率ののびによるものである。なお、その他の年代は微増減の範囲にとどまっている。

「スポーツ」は、20歳代前半以下で5ポイントを超えた拡大、40歳代以上では5ポイントを超えた縮小を示している。20歳代前半以下の拡大は男女とも行動者率が下落傾向にある中で女性の下落が顕著だったこと、40歳代~50歳代の縮小は男性の行動者率の下落が顕著だったこと、60歳代以上の縮小は女性の行動者率ののびが顕著だったことによるものである。

「趣味・娯楽」は、50歳代以下では大きな変化はない。60歳代以上で縮小を示しているが、これは、女性の行動者率ののびによるものである。

「旅行・行楽」は、20歳代から50歳代で拡大を示しているが、65歳以上では縮小を示している。中でも20歳代、30歳代、50歳代は5ポイントを超えた拡大となっており、20歳代後半は12.5ポイントと特に大きな拡大幅を示している。これらは、男性の行動者率の下落幅が大きいことによるものである。


図表10 年代別の男女差の変化
図表10

  1. (資料)総務省統計局「社会生活基本調査」より作成
  2. (注)「男女差の変化」は、「2016年の男女差(絶対値)-1986年の男女差(絶対値)」で算出。値が正の場合は男女差が拡大、負の場合は縮小したことを示す。
  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。

関連情報

この執筆者はこちらも執筆しています

ページの先頭へ