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社会動向レポート

「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」から読む国民のメディア利用(2/4)

社会政策コンサルティング部 仁科 幸一

4.インターネットの使われ方はどのように変化したか

(1)コミュニケーションメディアもインターネット利用が主流に

2020年度(最新調査結果・平日)のコミュニケーションメディアの全体(全年代)の利用者率をみると、音声通信では携帯電話18%、固定電話3%、文字通信ではラインやツイッターなどソーシャルメディア47%、eメール50%となっている。インターネットを介した文字コミュニケーションの優越がはっきりしている。(図表5)

年代別にみると、50歳代以上の年代でソーシャルメディアの利用者率が顕著に低く、20歳代以下の年代はeメールの利用者率が低い。とはいえ、60歳代でもおよそ2割がソーシャルメディアを利用しているというのは意外な印象がある。

20歳代の固定電話通話の利用者率0%というのは目を引く数字であるが、他の年代も1割に達しておらず、コミュニケーションメディアとして限定的な存在となっていることがわかる。また、携帯電話通話の利用者率は固定電話ほどではないにしても、1~2割程度となっており、最も高い60歳代でもソーシャルメディアの利用者率とほぼ同じ24%にとどまっている。

すべての年代で、コミュニケーションにおけるインターネット利用が主流になっているといっていいだろう。


図表5 コミュニケーションメディアの年代別利用者率(平日・2020年度)
図表5

  1. (注)「モバイル」とはフィーチャーフォンとスマートフォンの合計で、タブレットは含まない。
  1. (資料)「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」総務省情報通信政策研究所より作成

(2)パソコンかモバイルか:モバイルがインターネット利用の主力

2020年度(最新調査結果)のインターネットを利用する機器をみてみよう。(図表6)

全体(全年代)の利用者率をみると、モバイル端末*3は82%、パソコンは30%となっている。さらに年代別にみると、モバイル端末は40歳代以下の年代ではおよそ9割に達しており、60歳代でも6割に達している。

パソコンは、10歳代以外はほぼ3割で年代間に差はみられないが、10歳代だけは16%と低い。おそらく、パソコンはビジネスユースや競技性の高いゲームなど特殊な用途に、日常的な用途は手軽なモバイル端末という具合に使い分けられた結果なのだろう。

さらに利用者率の推移(図表7)をみると、モバイル端末は2012年度の59%から徐々に上昇し続け、2020年度には82%に達している。一方、パソコンは2012年度の33%から徐々に下落し2019年度には9ポイント減の24%となっていたが、2020年度は30%と前年度比6ポイントの上昇をみせている。背景にリモートワークの普及などの新型コロナ禍の影響が考えられる。

次に2020年度(最新調査結果)のコンテンツ別にパソコンとモバイル端末の利用者率をみてみよう(図表8)。全体(全年代)をみると、ここで取り上げたすべてのコンテンツで、モバイル端末が大きな差をつけて優位である。特にパソコンを舞台に普及したeメールやブログ・webサイトでさえ、ダブルスコア、トリプルスコアでモバイル端末が優位にある。

年代別にみると、若い年代ほどパソコンの利用者率が低い傾向がみられるが、意外だったのは60歳代でもここで取り上げたすべてのコンテンツでモバイル端末が優位にあることだ。考えてみれば、フリック入力になじめない筆者でも、プライベートのeメールやwebサイトの閲覧にパソコンを使うことはめったになくなっているのだから当然の結果ともいえる。



図表6 インターネットを利用する機器の年代別利用者率(平日・2020年度)
図表6

  1. (注)「モバイル」とはフィーチャーフォンとスマートフォンの合計で、タブレットは含まない。
  1. (資料)「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」総務省情報通信政策研究所より作成

図表7 インターネットを利用する機器の利用者率の推移(平日・全体)
図表7

  1. (注)「モバイル」とはフィーチャーフォンとスマートフォンの合計で、タブレットは含まない。
  1. (資料)「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」総務省情報通信政策研究所より作成

図表8 モバイル端末のコンテンツ別利用者率(平日・2020年度)
図表8

  1. (注)「モバイル」とはフィーチャーフォンとスマートフォンの合計で、タブレットは含まない。
  1. (資料)「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」総務省情報通信政策研究所より作成

5.ニュースとインターネット

私事で恐縮だが、2011年3月の東日本大震災の際、筆者は代休で自宅にいた。地震のゆれはそれほど大きくはなかったが間髪おかず停電になり、テレビをみることができなくなった。ラジオを通じて東北三県の被害状況を知ることになるが、「仙台市の海岸地域で津波によって数千人の死者が出ている模様」というニュースにも、「数千人の被災者じゃないのか」と思った。要するにピンとこないのである。夜になって停電が復旧してテレビを見たとき、空撮映像によって伝えられる津波に巨大さに息をのんだ。さらに翌朝の新聞報道から、地上で発生した被害の甚大さを総合的に知ることになる。

今日では個人が撮影した動画を、インターネットを介してみることができるようになった。しかし、それはあくまでも限られた地点の一時点の断片的な事実に過ぎない。また、ニュースサイトの伝える情報のほとんどは新聞社、通信社、テレビ局などのマスメディアに依存している。われわれが身の回り以外の出来事の全体像を知る術は、今もマスメディアによる報道しかないといっても過言ではない。

これまでみてきたように、インターネットの普及によって情報環境は大きく変化している。これによって国民の意識にどのような変化が生じているのか。本節では「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」で実施された意識調査*4を通じて意識の変化を探る。

(1)テキスト系ニュースメディアの利用:ポータルサイトが主力に

2020年度(最新調査結果)の全体(全年代)をみると、ポータルサイトが72%ともっとも利用者率が高く、次いでソーシャルメディア(47%)新聞(44%)の順になっている。新聞社の有料サイトは4%ともっとも低い。(図表9)

年代別には、60歳代では新聞が73%ともっとも利用者率が高いが、50歳代以下ではポータルサイトが新聞を上回っている。もっとも、60歳代でもポータルサイトは6割弱が利用しており、その差は意外に小さい。ソーシャルメディアは10歳代では53%とポータルサイトの55%に並ぶ利用者率を示しており、40歳代以下では5割を超えていて若年層には相当程度普及していることがわかる。

次に、もっとも利用するテキスト系ニュースメディアの推移をみてみよう(図表10)。2013年度には6割弱が新聞を上げていたが、その後急速に下落し、2020年度には20%にまで落ち込んでいる。対照的なのはポータルサイトで、2013年度は20%であったが急速に上昇して2017年度に新聞と同レベル、2020年度には45%に達している。この7か年度間の新聞の下落とポータルサイトの上昇は劇的といってよい変化である。

さらに興味深いのが「ニュースを読んでいない」と答えた者の割合の変化である。2013年度には18%だったが、ポータルサイトやソーシャルメディアを「もっとも利用する」と回答した者の割合と反比例するかのように、ほぼ一貫して下落傾向をみせている。その要因を断定できる材料はこの調査ではえられないが、ポータルサイトやソーシャルメディアが国民のニュースへのアクセシビリティを高めたのかもしれない。


図表9 テキスト系ニュースメディアの利用者率(2020年度)
図表9

  1. (注1)「ポータルサイト」にはYahoo!ニュース、Google ニュース等がある。
  2. (注2)「ソーシャルメディア」にはLINE NEWS 等がある。
  3. (注3)「キュレーションサービス」には、スマートニュース、グノシー等がある。
  4. (注4)このデータはアンケート調査の結果である。
  1. (資料)「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」総務省情報通信政策研究所より作成

図表10 もっとも利用するテキスト系ニュースメディアの推移(全体)
図表10

  1. (注1)「ポータルサイト」にはYahoo!ニュース、Google ニュース等がある。
  2. (注2)「ソーシャルメディア」にはLINE NEWS 等がある。
  3. (注3)このデータはアンケート調査の結果である。
  4. (注4)本項目が調査されたのは2013年度以降、「「ソーシャルメディア」が調査対象となったのは2014年度以降である。
  1. (資料)「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」総務省情報通信政策研究所より作成

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