建設分野における物価等動向について(2/3)
2024年10月
みずほリサーチ&テクノロジーズ サイエンスソリューション部 三澤 文香
3. 建設需要
建設投資は東日本大震災の復興、東京オリンピックによる建設需要が落ち着いた後も増加している。国土交通省の発表によると2024年度の建設への投資は前年度比2.7%増の73兆200億円となる見通しであり、直近10年では最も高い水準である。
図4 建設投資額の推移
- 出所:国土交通省 令和6年度(2024年度)建設投資見通し概要*3よりみずほリサーチ&テクノロジーズ作成
特に都内の市街地再開発事業地区は、令和5年10月時点で事業中地区(事業認可から工事完了前の地区)が61地区、予定地区(都市計画決定から事業認可前の地区)が20地区である。今後も築地、品川駅周辺、六本木、池袋西口、神宮外苑等の超大型の案件が控えており、再開発を中心とした建設需要の高まりの継続が予測される。
4. 人材不足の深刻化
建設分野の大きな課題の一つが人材不足である。日銀短観の雇用情勢によると、2024年6月データでは建設業は-57(雇用情勢が良いと回答した企業-悪いと回答した企業の割合)であり、1年前(2023年6月)と比較して状況は悪化している。他業種(全業界、製造業)と比較しても建設業界の人材不足は特に深刻である。
図5 雇用情勢
- 出所:企業短期経済観測調査(日本銀行)よりみずほリサーチ&テクノロジーズ作成
また、建設業の年齢別就業者数は、2004年時点では65歳以上の就業者数が6.1%、29歳以下の就業者の割合が15.7%であったが、2024年時点で65歳以上の就業者の割合が15.4%、29歳以下の就業者の割合が12.7%であり高齢化も深刻である。今後、高齢の人材が引退を迎えることで更に就業者数は減少すると想定され、業界として入職促進と定着による世代交代が急務であるといえる。
図6 建設業の年齢別就業者数
表3 建設業就業者の年齢構成(各年齢の割合)
- 出所:労働力調査(総務省)よりみずほリサーチ&テクノロジーズ作成
人材不足の深刻化を受け、国、業界団体等は様々な動きをみせている。国土交通省は令和6年に「第三次・担い手3法」を発表した。担い手確保、生産性の向上、地域の対応力強化を目的にした改正であり、その中の「建設業法及び公共工事の適正化の促進に関わる法律」の改正では(1)労働者の処遇改善、(2)資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止、(3)働き方改革と生産性向上を図るための措置、が盛り込まれている。具体的なアクションを図7に示す。
図7 建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案の概要
- 出所:建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案*3(国土交通省)よりみずほリサーチ&テクノロジーズ作成
また、業界団体(日本建設業連合会、全国建設業界、全国中小建設業界、建設産業専門団体連合会)が一丸となり、建設現場において土日閉所を目指すこととして「目指せ!建設現場 土日一斉閉所運動」を実施している。活動では、受注者、発注者団体への要請活動やポスター活動を実施している。
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