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「SDGs」経営のメリットと取り組み方(3/3)

  • *本稿は、大阪府中小企業団体中央会の冊子『中小企業にも大きなチャンス!「SDGs」経営のメリットと取り組み方』(2020年9月30日発行)に掲載されたものを、同会の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 グローバルイノベーション&エネルギー部 山本 麻紗子

5.中小企業がSDGsに取り組むときのステップ

(1)SDGs導入のためのアプローチ

企業がSDGsを経営に組み入れる場合、[1] 中期経営計画・ビジョンへの反映、[2] 社内課題の改善、[3] ESG情報の開示、[4] 既存事業の活性化、[5] 新規事業の創出、の5つのアプローチに分けて考えることができます。また、各アプローチは、目的別に、[1] ~[3] は「経営へのビルドイン」という、どちらかというと社内的な課題への取組として、[4] および[5] は「SDGs関連プロジェクトの創出」という本業の見直し・新規事業創出への取組という2つのカテゴリーに分けられます(図表10参照)。


<経営へのSDGsのビルドイン>

  1. [1]中期経営計画・ビジョンへの反映:SDGsを経営に取り込み、中長期的な事業戦略を投資家やユーザー、従業員等の理解を促進
  2. [2]課題の改善:グローバルマネジメント構築、ダイバーシティ経営の推進等、社内マネジメントが抱える諸課題を改善・解決
  3. [3]SDGs/ESG情報の開示:自社の持続可能性をアピールして取引先や地域社会の評価を獲得

<SDGs関連プロジェクトの創出>

  1. [4]既存事業の活性化:現在展開している事業や製品・サービスについて、SDGsに対する貢献度をアピール
  2. [5]新規事業の創出:新規の事業展開や製品・サービスの開発のヒントとして、SDGsを活用

図表10 SDGs導入のためのアプローチ
図10

出所:みずほ情報総研作成

(2)SDGsの導入ステップ

こうしたアプローチに対し、具体的にどのようにSDGsを導入すればよいかについては、以下のステップを踏みます(図表11参照)。


スタート そもそもなぜSDGsに取り組む必要があるのか、誰に向けたアピールをしたいのかについて、SDGsを理解し、自社にとってふさわしい取組方針を検討
ステップ1 事業の棚卸をして、自社の競争優位となる専門性やリソース・資源をSDGsの文脈と照らし合わせることで新たな強みやビジネス機会を模索
ステップ2 SWOT分析やファイブフォース分析を始めとする分析によってビジネスチャンスを洗い出し、中長期的な視点で事業計画にSDGsを取り入れる。また、中期経営計画へ盛り込み、達成を測る指標として目標・KPI(重要業績評価指標)を設定
  • *SWOT分析とは自社の強みと弱み、機会、脅威の4つの要素を使い、自社を取り巻く外部環境と内部環境に分けて自社の現状を分析する手法、ファイブフォース分析とは5つの競争要因から業界の収益性を分析する手法。
ステップ3 既存事業、製品・サービスを活性化し、SDGsの達成に貢献するような新規事業・サービスを創出

すべてのステップに共通して重要なのは、自社事業を一番よく知っている事業部とのコミュニケーションです。SDGsをただのCSRの置き換えとしてではなく、本業に反映させた新しいビジネスチャンスとして捉える段階へと進めていくために、事業部を始めとした社員が自分事としてSDGsに取り組んでいくことがとても重要になります。日本では、ステップ1の既存の自社事業とSDGsをタグ付けするに留まっている企業が多いのが現状です。今後、中長期的な視点でSDGsを取り入れ、より強くSDGsへコミットしていくことが企業に期待されます。


図表11 SDGs 達成のための取組ステップ
図11

※ GB(グリーン・ボンド)とは地球温暖化対策や再生可能エネルギーなど、環境分野への取組に特化した資金を調達するために発行される債券、SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)とは社会課題解決のために必要な初期費用を民間の資金で賄うこと。
出所:みずほ情報総研作成

脚注

  1. *12018年SDGsインデックスランキングでは、1位スウェーデン、2位デンマーク、3位フィンランド、4位ドイツ、5位フランス、6位ノルウェー、7位スイス、8位スロベニア、9位オーストリア、10位アイスランドであった(国連SDGsインデックス&ダッシュボードレポート)。
  2. *2JETRO「欧州のSDGs実践に関する調査(2019年3月)」

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