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社会的孤立の実態とその問題点についての考察(2/3)

  • *本稿は、『個人金融』2022年冬号(一般財団法人ゆうちょ財団、2022年2月発行)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほリサーチ&テクノロジーズ 主席研究員 藤森 克彦

2. 社会的孤立の実態

では、上記の孤立指標にしたがって、社会的孤立の実態をみていこう。具体的には、男女別、年齢階層別、配偶関係別、世帯類型別に分けて、各孤立指標における孤立者の出現率をみて、どのような属性に社会的孤立が起こりやすいかを考察する。

(1)男女別にみた社会的孤立者の出現率

社会的孤立者の出現率について、全体観をみていこう。総数をみると、社会参加欠如型が6.6%、提供的サポート欠如型3.2%、会話欠如型2.2%、受領的サポート欠如型1.7%である(表1)。なお、2つ以上の孤立指標に該当している人の比率は、総数1.4%、男性2.1%、女性0.7%となっている(みずほリサーチ&テクノロジーズ、2021、33)。複数の孤立指標に該当する人は、全体としては低い水準である。

男女別に比較すると、社会参加欠如型を除く3つの孤立指標において、いずれも男性の比率が女性よりも高くなっている。男性の方が女性よりも社会的孤立に陥りやすいことは、これまでの先行研究でも示されてきた点である。


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表1 男女別にみた社会的孤立者の出現率

(単位:%)

  会話
欠如型
受領的サポート
欠如型
提供的サポート
欠如型
社会参加
欠如型
総数 2.2 1.7 3.2 6.6
男性 3.0 2.6 4.4 6.2
女性 1.4 1.0 2.1 7.0

(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、25頁に基づき作成。

(2)年齢階層別にみた社会的孤立者の出現率

次に、年齢階層別に社会的孤立の出現率(全体)をみると、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の孤立に陥る人の比率は、50代までは1~2%台の低水準であるが、60代以降になると高まる傾向がみられる(表2)。特に、提供的サポート欠如型では、80歳以上で10%を超えるなど、60代以降大きく上昇する。

男女別にみると、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型は、男女ともに年齢が高まるにつれて孤立する人の比率も高まる。このうち提供的サポート欠如型をみると、女性は男性に比べて70代から80代にかけて急激に孤立する人の比率が高まる。80代の高齢女性は、提供的サポート欠如型の孤立に陥る人の比率が高い。この背景には、女性は男性より平均寿命が長いので、高齢女性は配偶者を亡くすことによって、手助けをする相手がいない状況が生じやすいと推察される。

なお、社会参加欠如型孤立については、年齢階層別の明確な傾向はみられなかったが、20代~30代では、女性の方が男性よりも、「参加したいができない」と回答する人の比率が高い。


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表2 年齢階層別にみた社会的孤立者の出現率

(単位:%)

  全体 男性 女性
会話
欠如型
受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型 会話
欠如型
受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型 会話
欠如型
受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型
18-19歳 1.1 0.8 1.2 4.5 2.3 1.6 2.7 2.0 0.0 0.0 0.0 6.6
20-29歳 1.2 1.7 2.4 5.9 1.6 2.1 3.8 4.5 0.9 1.2 1.1 7.1
30-39歳 1.1 1.4 2.2 7.3 1.6 2.5 3.6 6.3 0.7 0.3 0.9 8.2
40-49歳 1.5 1.6 2.3 8.1 2.3 2.4 3.8 7.7 0.8 0.9 1.0 8.5
50-59歳 2.0 1.6 1.9 7.4 2.8 2.3 3.1 7.2 1.2 1.0 0.7 7.7
60-69歳 2.9 2.0 3.2 5.9 3.7 3.0 4.6 5.5 2.2 1.0 1.7 6.2
70-79歳 3.3 2.2 5.9 4.5 4.9 3.1 7.1 4.6 1.9 1.4 4.6 4.3
80歳以上 3.4 2.1 13.0 5.9 4.3 2.3 10.5 7.5 2.7 1.9 14.9 4.8

(注)灰色部分は、10%を超える箇所。
(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、26頁に基づき作成。

(3) 配偶関係別にみた社会的孤立者の出現率

配偶関係別にみた社会的孤立者の出現率を60歳未満と60歳以降に分けてみていく(表3)。まず、60歳未満をみると、会話欠如型と受領的サポート欠如型の出現率は、未婚者と離別者で高い。一方、提供的サポート欠如型は、未婚者と死別者が4%台となり、相対的に高い水準となっている。

次に、60歳以上の年齢階層について、配偶関係別に社会的孤立者の出現率をみると、特徴的なのは、未婚者について、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の出現率が10%を超える高い水準になっている点である。60歳以上の未婚者は、他の配偶関係に比べて、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の孤立に陥りやすいことが推察される。また、離別者についても、提供的サポート欠如型の出現率が10%を超えている。

なお、社会参加欠如型は、60歳未満及び60歳以上ともに、配偶関係ごとの違いがあまり明確ではない。


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表3 配偶関係別にみた社会的孤立者の出現率

(単位:%)

  60歳未満 60歳以上
会話
欠如型
受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型 会話
欠如型
受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型
未婚 2.6 3.3 4.5 5.4 12.4 10.1 17.2 5.8
配偶者あり 0.7 0.7 0.9 8.4 2.0 1.3 3.2 5.2
死別 1.0 1.1 4.1 7.5 3.5 1.9 9.5 5.2
離別 3.4 2.6 2.6 6.7 7.8 5.7 11.2 7.3

(注)灰色部分は、10%を超える箇所。
(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、28頁に基づき作成。

(4) 世帯類型別にみた社会的孤立者の出現率

世帯類型別に社会的孤立者の出現率をみていこう。表4をみると、高齢の単身男性において、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供型サポート欠如型の孤立に陥る人の比率が二桁を超える高い比率となっている。また、非高齢の単身男性も、二桁は超えないものの、上記の3つの孤立指標の出現率は、相対的に高い水準にある。

単身世帯の女性をみると、高齢の単身女性において提供的サポート欠如型の孤立に陥る人が10%弱の高い比率になっている。ただし、会話欠如型や受領的サポート欠如型の孤立に陥る人の比率は高くない。また、非高齢の単身女性においては、いずれの孤立指標も総数の比率とほぼ同程度であり、高い水準ではない。

他の世帯類型をみると、ひとり親世帯において、社会参加欠如型の孤立に陥る人の比率が、11.5%と高い水準となっている。

総じてみると、高齢期と現役期の単身男性は、他の世帯類型に属する人よりも会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供型サポート欠如型の孤立に陥りやすい。なお、単身女性は、高齢期、非高齢期ともに男性ほど孤立していない。この背景には、単身女性は「別居家族」との関係を持つ人の比率が高いことに加えて、単身高齢女性は「近所」、現役期の単身女性は「友人」とのつながりを持つ人の比率が男性よりも高いことがあげられる。

また、ひとり親世帯も、社会参加欠如型の孤立に陥りやすいと考えられる。


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表4 世帯類型別にみた社会的孤立者の出現率

(単位:%)

  会話欠如型 受領的サポート
欠如型
提供的サポート
欠如型
社会参加欠如型
単身世帯 高齢
(65以上)
男性 14.8 11.1 17.4 6.4
女性 5.4 4.2 9.7 4.9
非高齢
(0-64歳)
男性 8.3 6.9 9.4 6.0
女性 4.4 1.7 2.2 6.9
夫婦のみ
世帯
夫婦とも高齢 2.4 1.7 3.4 5.3
夫婦とも非高齢 1.1 1.5 1.3 6.9
三世代世帯(子どもあり) 0.5 0.5 2.5 6.2
二世代世帯(子どもあり) 0.6 0.5 0.9 8.1
ひとり親世帯(二世代) 1.8 0.4 0.5 11.3
総数 2.2 1.7 3.2 6.6

(注1)「子ども」とは20歳未満の世帯員をいう。
(注2)灰色部分は、10%を超える箇所。
(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、29頁に基づき作成。

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