コンサルタント

幼少期、自由研究で大気汚染や酸性雨について調べたことがきっかけで、環境問題に関心を抱く。大学・大学院では農業生産と自然環境の関わりについての研究活動を行い、就職活動では、より社会や行政、企業と密接に関わりながら課題解決に貢献したいという思いでコンサルタント職を志望。環境分野に豊富な実績を持つ点から、みずほリサーチ&テクノロジーズへ入社を決めた。

カーボンニュートラルという
目標の裏にある、
各企業の悩みに応える。

サステナビリティコンサルティング第1部・第2部は、官公庁が実施する環境関連の政策立案にかかる支援や、民間企業におけるサステナビリティ分野での対応支援を行っています。そのなかで、私が所属する環境ビジネス戦略チームは主に民間企業の支援を担当しており、投資家向けのESG情報開示に関する支援や温室効果ガス排出量の算定や目標設定、削減施策の検討支援などを行っています。
日本政府は、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比46%削減、2050年までにカーボンニュートラル実現を目標として掲げています。当然ながら、これらを達成するには国内各企業にも積極的な取り組みが求められますが、企業のなかには「どのような目標設定が妥当なのか」、「どのような情報を開示するべきなのか」といった悩みを抱えているところも少なくありません。私たちは、このような企業からの要請を受け、現状を細かくヒアリングしながら、温室効果ガス排出量の削減方法や具体的な削減目標量、情報開示の内容などを提案しています。

正論を披露するだけでは不十分。
重要なのは、
施策にどう落とし込むか。

入社して間もない頃は、膨大な情報や複雑な制度・指標などを「いかに正確にお伝えできるか」という点に心を砕いていました。しかし、あるお客さまを対応した際、「情勢や内容についてはよく分かったけど、それを受けて当社がどうするべきなのかが分からない」というご指摘を受けたことがあります。先輩社員に相談したところ、「正しい情報を伝えるのは大前提。コンサルタントに求められるのは、お客さまがどのようなアクションにつなげるべきなのかを提案することだよ」と指摘を受けました。この一言は、私自身に強く響き、以来、常に心がけるようにしています。
特にサステナビリティという分野では、視野に入れるべき要素が複雑に絡み合うことから、事実関係や理想論を示すだけでは十分なソリューションになりません。お客さまがどのような悩みや課題を抱えているのかを丁寧にヒアリングし、そのうえでニーズや実情に即したご提案につなげるよう意識しています。また、お客さま自身が気づいていない課題が潜むケースも少なくありません。的確にご対応するため、他社の取り組み事例などにもアンテナを張って幅広い情報収集に努めています。

「環境」を切り口に
信頼関係を築けば
支援の幅を広げ、
よりよい姿を目指していける。

事業会社のお客さまの環境・サステナビリティ部門からご依頼いただき、脱炭素に関する支援を行った際のことは、印象に残っています。
はじめにお客さまからは、気候変動に関する投資家向けの情報開示についてのご相談を受けました。TCFDと呼ばれる国際的な開示フレームワークに則った情報開示を行うため、お客さまの社内では環境・サステナビリティ部門に加え、コーポレート部門や経営企画、広報IRも巻き込んだ大がかりなプロジェクトを組成することとなりました。このお客さまの事業領域は非常に幅広いため、アンケート形式で各事業部からの意見を募りましたが、100件以上の意見が集まりました。この整理・集約は非常に大変な作業でしたが、多様な意見を取り入れながら対外発信の草案をまとめることができ、お客さまにも大変感謝していただきました。
そういった取組姿勢が評価されたのか、その次には脱炭素の目標設定に係るご相談を頂きました。お客さまは「カーボンニュートラルを宣言するべきかどうか」、「宣言するならどのように取り組んでいくべきか」、「投資家に対してはどのような情報を伝えるべきか」といった漠然とした悩みを抱えていました。このようなご相談自体は決して珍しいものではなく、当社にも豊富な実績があります。指導的に物申すのではなく、お客さまに寄り添いながら一緒に考えていく姿勢で対話を重ね、同じ業界の事例をご紹介しながら、効果的で現実的な目標設定、そして投資家への発信方法などを提案しました。
その後は技術開発部門からも声がかかり、お客さまにて開発されている温室効果ガス削減技術の評価に関するご支援にも繋げることができました。
このように、環境を切り口に複数の課題に取り組めたのは、最初の案件を通じて信頼関係を構築できたからだと思います。通常、私たちが最初にコンタクトをとるのは各企業の環境・サステナビリティ部門の方々ですが、ご依頼に真摯に向き合い、しっかりしたご提案でお応えできれば他の件でも相談に乗っていただきたいという形で話が広がっていくこともあります。もちろん当社のビジネス面でも望ましいことですが、お客さまにとっても、環境に関する取り組みの拡大・強化につなげていただけます。今後も、このようなwin-winの関係を構築していけるよう、一つひとつの案件に全力を傾けたいですね。

判断材料として
多様な情報を集め
実現可能性を見据えて
目標値を設定。

先に触れた事業会社のお客さまの案件ではさまざまな難局に直面しましたが、なかでも苦労したのは、温室効果ガス排出量に関する2030年の中間目標設定です。もともとお客さまにて目標を設定していましたが、2050年カーボンニュートラルを目指すうえでは、中間目標をよりシビアにする必要がありました。ただし、いたずらに厳しい目標を立てても、実現可能性がなければ意味を成しません。そこで「実現を見込める水準」「社会の一員として成し遂げるべき水準」のバランスを視野に進めることにしました。特に後者は、政府が定めている目標や産業界に求められている削減割合、各イニシアチブ団体が企業に求める水準など、さまざまな要請・指標があります。これらを整理したうえで、お客さまの側でも技術面・コスト面から実現できそうなラインを検討していただくことで、落としどころを模索していきました。こうした検討には、過去に経済産業省に出向し政策立案に関わった経験も大いに役立ちました。
お客さまやカーボンニュートラルを取り巻く状況・変化は非常に激しく、新たなルールや指標が次々と出てきます。お客さまの実情に見合った水準をお示しするには、常に最新の情報に触れて知識をアップデートする必要があるのだと、改めて実感しました。

ある1日のスケジュール

  • 9:00

    出社。メールチェック

  • 10:00

    お客さまへの提案資料について、
    チームメンバーと相談

  • 11:00

    ウェブ会議(お客さまと温室効果ガス削減目標に関するディスカッション)

  • 12:00

    会社周辺でランチ

  • 13:00

    翌日の打ち合わせ資料の作成

  • 16:00

    オンラインセミナー聴講(気候変動に関する情報開示の海外動向)

  • 18:00

    メール対応

  • 19:00

    新規受注案件の契約書作成

  • 20:00

    翌日のタスクを確認し、帰宅

お客さまを支援することで
日本のサステナブルな未来に貢献する。

先にも触れたとおり、日本がカーボンニュートラルを実現するには、各企業の努力が不可欠です。サステナビリティ分野でお客さまを支援することが日本全体の目標達成に近づくとも言えますから、職務を通じて社会的意義を実感しています。また、案件を担当するたびに新たな学びや気づきを得て成長できる点は、私にとって大きなモチベーションになっています。引き続き、専門性や対応力に磨きをかけて、お客さまに貢献していきたいですね。入社以来、私は地球温暖化や気候変動を中心に関わってきましたが、最近の国際会議などでは生物多様性や資源循環といった新たなテーマも取り上げられるようになってきました。これらの分野の知見も蓄えて、総合的な提案力を高めていきたいと思っています。

※所属部署は取材当時のものになります。