コンテンツビジネスに
おける課題解決のために
開発した著作権管理ソリューション「WisRights」。
コンテンツビジネスでは、映画やアニメといったコンテンツ作品について、著作権保護期間の70年にわたり、収入・支出を適切に管理し、多くの関係者へ定められたタイミングで支払いをする必要がある。例えば映画業界では、作品を作るための資金調達の際に、単独出資ではなく複数の企業が共同出資・利益分担する製作委員会方式が主流となっている。製作委員会方式では、利益分配における配分金の計算方法や支払いのルールは委員会ごとに定められている。近年、製作委員会方式による作品数は増加傾向にあり、映画制作を手掛けるコンテンツ企業など、製作委員会を管理する企業担当者の著作権管理業務の負荷が増大している。そのため著作権管理業務の効率化が大きな課題としてクローズアップされている。
当社が提供する「WisRights」は、このような著作権管理に関わる業務を一元管理するソリューションである。コンテンツ管理や販売実績管理、著作権料・許諾料・配分金の計算やレポーティングなど多様な機能をパッケージ化している。著作権管理に関わる業務の効率化ばかりでなく、コンテンツ作品が生み出す文化を守り育んでいくためのパッケージソリューションだ。
「『WisRights』は、みずほ銀行との連携により明らかにした業界各社からのニーズを元に当社が開発しています。ユニークで価値のあるソリューションではないでしょうか。」
このように話す岡村は、入社3年目の2023年4月、「WisRights」を担当するチームに異動した。そして、すぐに映画を始めとした映像制作を手掛ける大手コンテンツ企業A社への「WisRights」開発・導入プロジェクトに加わることになった。

大手コンテンツ企業への
「WisRights」
導入・開発プロジェクト。
入社3年目でサブリーダーを
担うことになった。
A社ではこれまで、当社がスクラッチ開発した独自の著作権管理システムを利用していた。導入から年月が経ちそのシステムが老朽化していたことに加え、収支計算・管理対象となるコンテンツ作品数の増加や、収支計算方法が複雑化しシステムでは対応しきれないケースが発生するといった課題に対応するため新たに「WisRights」を導入するというのが今回のプロジェクトである。
「WisRights」は、複雑な著作権管理業務に対応するために、パッケージソリューションとはいえ自由度の高い設計になっている。そのため、A社への導入にあたっては、多くの部分で新たな検討や開発が必要となった。プロジェクトチームは岡村、著作権管理に精通した先輩、上長の3名に加え数名のメンバーで構成され、岡村はサブリーダーを担った。
「システム開発については前の部署でそれなりに経験を積んできましたが、著作権管理やそれに関連の深い経理などの知識はほとんどありませんでした。それに正直言って、私は映画もあまり観ないようなタイプ。自分にとってこのプロジェクトは、一から学びながら前進していくというチャレンジだったのです。」(岡村)
プロジェクトは、まずA社の各担当者から現状の業務内容などをヒアリングすることからスタートした。
「ミーティングを重ねながら、一つひとつの業務について『WisRights』に円滑に移行できるのか、あるいは追加機能の開発や、業務のやり方の変更といった対応が必要なのかを洗い出していきました。」(岡村)
地道な作業ではあるが、お客さまに満足していただけるシステムを実現するためには鍵を握るフェーズといってよいだろう。岡村は自らも勉強して知見を深めながら、粘り強く検討を重ねた。
やがて2023年も夏を迎える頃にはお客さまとの信頼関係も芽ばえ、交渉の場で岡村が前面に立つ機会も増えてきた。

開発の現場を取りまとめ、
プロジェクトを円滑に
前進させていく。
プロジェクトでは、お客さまへのヒアリングと並行して追加機能の開発が必要となり、岡村は要件定義から設計、実装、テストに至るまで全工程を推進した。さらに岡村は、もう一つ重要なミッションを任されることになった。
「『WisRights』の導入にあたっては、会計システムをはじめA社で稼働している複数の既存システムとの連携が必要であったのです。システムによってサービスを提供する会社が異なっていたため交渉や調整も困難でした。」(岡村)
このような壁を乗り越えながら、岡村は開発を推進していった。その開発が一つのゴールを迎えたのは、プロジェクト開始から半年余りが過ぎた2023年9月のこと。システム全体の機能を確認するテストが実施された。岡村が取りまとめたテスト結果をチェックした上長は、「とりあえず、お疲れさま!」と笑顔を浮かべながら声をかけてくれた。ずっと走り続けてきた岡村が、ふと安堵した瞬間だった。

プロジェクトでの濃密な経験が
自分を大きく成長させたと
実感している。
しかし、プロジェクトには乗り越えなければならない最後のフェーズがあった。2023年11月、著作権管理に関わる膨大なデータが移行され、A社においていよいよ「WisRights」が稼働した。岡村は現在、この試験的な運用の対応に奔走している最中なのだ。
事前に検討を重ねたとはいえ、実際に運用が始まると、既存業務とのすり合わせなど新たに調整しなければならないことも多い。場合によっては新たな追加機能の開発が必要になる場合もある。システムテストの終了時に、上長が「とりあえず」と言ったのは、このフェーズを見据えてのことだった。
「ずっと走り続けてきた」とプロジェクトを振り返る岡村だが、最近は少しずつまわりを見渡す余裕も出てきた。A社の担当者から岡村に直接送られてくるメールや電話も増え、お客さまからの信頼が厚くなってきたと実感している。その岡村はこの先、どのような技術者像を思い描いているのだろうか?
「このプロジェクトを通じて著作権管理に対する理解が深まり、それと同時に『WisRights』がお客さまや社会にもたらす価値の大きさに気づきました。この著作権管理の分野において、『有識者』と評価されるような技術者になることが現在の目標です。また、チームのメンバーやお客さまから信頼されるプロジェクトリーダーを目指しています。」(岡村)
このプロジェクトでの濃密な経験が、岡村を大きく成長させたことは間違いないだろう。それに加えて、岡村は著作権管理という自らの専門分野を見出すこともできた。企業や社会のシステムのみならず、文化を守り育む土壌を支えていくことも、当社の技術者が担う大切な使命なのである。
※所属部署は取材当時のものになります。